KIT航空宇宙ニュース2022WK21

ファーンボロ国際エアショーが3年ぶりに7月18日から英国ファーンボロ空港で開催
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK21

海外のニュース

1. eVTOL機を開発中のJoby AviationがCirrusSR22を使用してエアタクシー事業を開始

米国の新興企業でeVTOL機を開発中のJoby Aviationは、Cirrus SR22を使用して商用便を運航するために必要となる連邦航空法Part135の運航認可(AOC)をFAAより取得した。これにより、同社は最終的に電動エアタクシーを運航する準備ができる。使用する航空機は、単発のコンチネンタルピストンエンジンを搭載した5人乗りCirrus SR22で、カリフォルニアを拠点として事業を開始すると述べている。今回のお運航認可は、エアタクシーのコンセプトを実現するために必要な3つの承認のうちの1つで、その他には、開発中のエアタクシー用のeVTOL機の型式証明と製造証明がある。JobyのeVTOL機は、最大130nm(241km)の範囲を持ち、最大174kt(322km / h)の速度で飛行することが可能。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:シーラス社の「SR22」】

【Flightglobal提供:Jobby社が開発中のeVTOL機】

2.ファーンボロー国際航空ショーが再開

ファーンボロー国際航空ショーは、今年7月18日から22日に開催される。何十年もの間、ファーンボロー国際航空ショーは、航空宇宙、航空、防衛産業にとって最も重要なグローバルプラットフォームを形成している。過去2年間、コロナウィルスの世界的感染拡大により中止を余儀なくされていたが、イベントの役割は今やより重要であり、エアショーは世界中のビジネスリーダーの接触機会をサポートし、航空ビジネスの成長と回復を可能にする機会となる。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:2019年に開催されたファーンボロエアショー会場全景】

3.Eviationの全電動航空機Aliceが初飛行間近

Eviation社が開発中の全電気飛行機のデモンストレーター(Aliceと呼ばれる)は、シアトル北部のワシントンにあるアーリントン市営空港(KAWO)で今月、低速タクシーテストプログラムを完了した。 ジュネーブで開催されたEuropean Business Aviation Conference and Exhibition(EBACE 2022)のFlightGlobalレポートは、5月2日に低速地上試験が終了し、Aliceが最高速度86ktsを達成したと述べた。2019年のパリ航空ショーで最初に発表されたアリスは、9人の乗客と2人のパイロットを収容するように設計されている。最大巡航速度:250ノットで航続距離:約440nm、最大離陸重量16,500ポンドです。 同社は昨年4月に75機のAlice航空機を受注している。【Flightglobal News】

【Eviation提供:全電動航空機「Alice」】

4.VoltAeroが電動ハイブリッド航空機Cassioの分割所有(Fractional Ownership)プログラムを開始

フランスのVoltAero社は、5月18日にヨーロッパで分割所有(Fractional Ownership)プログラムの開始を発表し、同社独自の電気並列ハイブリッド推進システムを搭載したCassio航空機のファミリーで新しい持続可能なエアモビリティの機会を提供する。VoltAeroは、ジュネーブで開催されたEuropean Business Aviation Convention&Exhibition(EBACE)で、VoltAeroの最初のバージョンである5人乗りのCassio 330から始まる、分割所有権の株式ポジションに対する最初の関心表明の新しい機会を顧客へ提供し、航空機ファミリーの生産に入る。VoltAero独自の330kW電気並列ハイブリッド推進システムを搭載したCassio330は、ユーザーの需要を満たすためにヨーロッパ中の地方空港および地方空港に配置される予定。分割所有権プログラムは、最初のモデルを超えて拡張する予定。Cassio480は、6つのシートで構成され、480キロワットのハイブリッド推進システムを搭載。そしてCassio600は、10〜12席の容量と600キロワットのハイブリッド電力を備えている。航空機の3つのバージョンはすべて、高度なモジュール性と共通性を有している。 Cassio機体の設計は、滑らかで空力的に最適化された胴体、前方カナード、およびハイセット水平尾翼をサポートするツインブームを備えた後方セット翼に基づいている。これは、ヨーロッパのEASA CS23認定仕様に、単発エンジンの一般的な航空カテゴリの航空機として認定され、最初から所有者コスト(Ownership Cost)が低くなるよう設計されている。【Flightglobal News】

【VoltAero提供:電動ハイブリッド航空機「Cassio330」】

日本のニュース

1.  スターフライヤー、町田新社長「会社強くする使命」会長新設で非航空強化へ

スターフライヤーの新社長に就任する全日本空輸の町田修・香港支店長(57)は5月26日、ブランド力を強化し会社を強くする姿勢を示した。現任の白水政治(しろうず・まさはる)社長(65)は退任する。スターフライヤーの筆頭株主はANAなどを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)で、2014年から3代続けてANA出身者が社長に就くことになるが、ANA本体在職中の選任は初めて。また代表権のある会長職を新設し、阪急電鉄出身で一般社団法人グローカル交流推進機構(大阪市)専務理事の横江友則氏(65)が就任する。両氏とも6月29日開催予定の定時株主総会で正式に選任される見通しで、同日付で就任する。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:左からWeb参加の町田新社長、横江新会長、退任する白水現社長】

2.ANA、国内線自動チェックイン機廃止へ 既存スマホアプリ強化で新サービス

全日本空輸は5月24日、搭乗準備から機内までスマートフォンなどの携帯端末で完結する新サービスモデル「ANA SMART TRAVEL」を発表した。既存のスマホアプリ「ANAアプリ」との連携を強化しデジタル化を進めることで、従来型の対面式接客を非接触・非対面化する。一方、国内線で導入する乗客自身が予約時に手続きすることで空港でのチェックインを省略する「スキップサービス」や自動チェックイン機は順次廃止する。新サービスは国内線と国際線の双方で順次導入する。これまでの電話予約や空港でのカウンター手続きなどの有人サービスを、スマホアプリでの「おもてなし」に強化することで、接客時の非接触・非対面化を進める。既存の「ANAアプリ」は4月26日に、国内線オンラインチェックイン機能をリニューアル。予約情報を事前に連携することで、アプリ立ち上げ時にワンタップでオンラインチェックイン画面や搭乗券を表示できるようになった。国際線では対応済みの座席選択・変更は、国内線では6月15日から導入する見込み。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:新サービスアプリ「ANA Smart Travel」を発表するANA井上社長】

3.野口聡一宇宙飛行士がJAXAを退職、今後は民間人として宇宙の発展を支援

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の野口聡一宇宙飛行士は5月25日、都内で会見を開き、6月1日付でJAXAを退職し、今後は民間人の立場から宇宙を盛り上げていく予定であることを発表した。野口宇宙飛行士は1996年にJAXAの前身の1つである宇宙開発事業団の宇宙飛行士候補生に選定。その後、スペースシャトル「コロンビア号」の事故後、初の打ち上げとなるスペースシャトルに搭乗したほか、日本人として初めてソユーズ宇宙船に船長補佐として登場。直近では、スペースXのクルードラゴンの運用初号機に搭乗するなど、JAXAの切り込み隊長として、その任をまっとうしてきた。野口宇宙飛行士は、会見の席にて、「26年間、いろいろな形で応援してもらってありがとうございました。あっという間の26年だったと思います。皆様からの応援もありまして、無事に3回の宇宙飛行から帰ってくることができました」と多くの人に支えられて、ここまでこれたことを強調。「3回目の宇宙飛行を終えた直後くらいから、後輩、これから選抜される新人に対し、道を譲りたいと思い、退職を決めた」と退職を決意した背景を説明した。JAXAを退職した6月以降については、まだ詳細は語られなかったが、1人の民間人として、JAXAをはじめとする研究機関なども含め、連携して宇宙を盛り上げていくことを目指すとしており、未来を作る次世代人材育成など、幅広い活動を行っていくとする。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:JAXA退職記者会見する野口宇宙飛行士】

4.JAXA、空気吸い込みエンジン研究に向けロケットの超音速燃焼飛行試験を実施へ

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、空気吸い込みエンジン(スクラムジェットエンジン)研究の一環として、観測ロケット「S-520-RD1」による超音速燃焼飛行試験の実施を発表した。実験場所は鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で、2022年7月23日午前5時~5時30分の実施が予定されている。空気吸い込みエンジンとは、大気中の酸素と搭載した燃料を燃焼させて動力とするもので、燃焼用酸素の搭載を必要とするロケットエンジンに比べ多くの貨物を搭載できることから、将来の宇宙往還機や大陸間高速輸送機への適用が期待されている。そしてJAXAでは現在、極超音速(音速の5~6倍の速度)でも使用可能な空気吸い込みエンジンの研究を実施しているとのことだ。空気吸い込みエンジンの研究における地上の風洞試験では、複雑な流路により生じる気流の乱れの違いや、気流加温に伴う異ガスの混入により、実飛行との間で空力加熱やエンジンの特性に差異が生じるという。そのためJAXAは、地上での風洞試験結果を補正して実飛行状態における特性を予測する解析ツールの構築を目標としているとのことだ。またその解析ツールによって、空気吸い込みエンジンを搭載する将来の飛翔体実現に必要な飛行試験回数を削減でき、開発コストの低減につながるとしている。今回実験を行うS-520-RD1号機は、観測ロケットS-520の1段部分と飛行試験用の供試体で構成され、全長は約9.15m、直径は約0.52m、全備質量は約2.6トンだという。また同機に搭載される飛行試験用の供試体は長さ約1.8m、直径約0.52m、質量は約300kgで、先端部分から供試体内部の空気吸い込みエンジン内に空気を取り込むとともに、点火用の水素と燃料のエチレンをエンジン内に噴射して燃焼させる計画とのことだ。【マイナビニュース】

【JAXA提供:スクラムジェットエンジン試験用供試体】
【JAXA提供:計画している試験飛行と供試体】