KIT航空宇宙ニュース2023WK28

ドイツの航空宇宙研究所DLRが航空機エンジンの作動条件下での水素直接燃焼試験を実施
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK28

海外のニュース

1.ケルン研究センターは現実的なエンジン条件下での水素燃焼実験を実施

ドイツの航空宇宙研究所DLRは、欧州連合の研究プログラムを通じて、現実的な航空機エンジンの作動条件下で水素燃焼試験を実施した。DLR は、エンジン内での100%水素の燃焼に関して、米国のゼネラル・エレクトリック社と協力してきた。GEエアロスペースは、4年間の研究パートナーシップの一環として、直接水素燃焼用に設計された新しいシステムを供給した。同社はパスポートエンジンを、水素燃料使用に改造することを計画しており、機体製造者のエアバスとZEROeイニシアチブの一環としてエアバスA380でテストされる予定です。燃焼試験はケルンにある DLRの推進技術研究所で実施された。燃焼プロセスを中断することなく分析するために、レーザー光学測定技術が使用されており、同研究所のエンジン測定システム責任者のクリスチャン・ウィラート氏は、この技術により数値シミュレーションの検証が可能になると述べた。「燃焼挙動が従来の航空燃料の燃焼挙動とは大きく異なるため、航空機エンジンにおける純水素の低排出かつ安全な燃焼は、今日でも大きな課題となっている」と同団体は述べている。【Flightglobal News】

【DLR提供:DLR の水素燃焼試験装置(中央右にレーザー光学測定システムを搭載)】

日本のニュース

1.JAL函館行きJL585便着陸時の予備燃料不足で重大インシデント認定 

月12日午前9時35分ごろ、日本航空の羽田発函館行きJL585便(ボーイング767-300ER型機、登録記号JA614J)が函館空港へ着陸しようとした際、視界不良で着陸を2回やり直した後に新千歳空港へ向かったが、着陸時に残すべき予備燃料が社内規定量を下回る可能性があったため、管制官に対して優先着陸を求めた。監督する国土交通省航空局(JCAB)は13日、航空事故につながりかねない「重大インシデント」に認定した。JCABによると、航空法施行規則第166条の4第13号「緊急の措置を講ずる必要が生じた燃料の欠乏」に該当することが、重大インシデントと判断した理由だという。航空法には、予備燃料の残量について具体的な数値は示されていないが、JALは国連の専門機関ICAO(国際民間航空機関)が定める「30分間飛行可能な量」を、社内規定として取り入れているという。JL585便は羽田を12日午前7時43分に出発。函館と悪天候時などの代替空港である新千歳の天候などを確認し、安全に着陸できる法定燃料を満たした飛行計画により、函館へ向かった。函館には午前8時55分に到着予定だったが、視界不良により午前9時ごろに1回目のゴーアラウンド(着陸復行)を実施。同19分には、2回目のゴーアラウンドを行ったことから、目的地を新千歳空港へ変更した。新千歳へ着陸時に残す予備燃料が、社内規定で示している30分間飛行可能な量を下回る可能性があり、午前9時35分ごろ管制官に優先的な取り扱いを求め、新千歳へ同49分に着陸した。着陸後に予備燃料の量を調べたところ、社内規定で定める30分間飛行可能な量「4200ポンド」を下回る3400ポンドだった。3400ポンドでは25分間飛行できるが、社内規定よりも5分間分の燃料が不足した状態だった。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:函館空港に緊急着陸したJAL767型機】

2.福岡空港、7/22に10社合同説明会 参加無料

福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は7月22日に、福岡空港内の事業者と連携した合同企業説明会を開催する。新卒のほか、既卒・社会人を対象とした説明会で、FIACをはじめ旅客サービス業務やグランドハンドリング、保安検査など10社が参加する。参加は無料だが、事前予約が必要となる。対象は2024年新卒、2025年新卒、既卒・社会人。参加するのはANA福岡空港、エスエーエス、JALグランドサービス九州、JALスカイ九州、スイスポートジャパン、にしけい、西鉄エアサービス、西日本シミズ、福岡給油施設、FIACの10社で、国内線旅客ターミナルビル3階南側「TSUTAYA BOOKSTORE 福岡空港」横イベントスペースにブースを出展し、午前10時から午後5時まで開催する。FIACは1月と3月にも合同企業説明会を開催し、合計で約950人が参加した。また2月には、空港内事業者のさまざまな職種の求人情報を横断的に掲載した「福岡空港採用専門サイト」を開設し、人材の確保に努めている。【Aviation wire news】

3.JBZ、ホンダジェットの国内チャーター開始

航空運送事業などを手掛けるJapan Biz Aviation(JBZ、東京・大田区)は7月12日、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」のチャーターサービスを国内で始めたと発表した。チャーター便は空港の運用時間内であれば、航空会社の定期便が設定されていない時間帯でも運航できることから、国内を移動時に柔軟なスケジュールを設定できる。利用空港は羽田や成田、関西をはじめ、地方を含めほとんどの空港を利用できるという。羽田を出発し、函館と利尻、紋別、札幌を巡って帰京するモデルコースの場合、公共交通機関を利用すると3日程度かかるが、ホンダジェットのチャーター便であれば日帰りも可能。羽田を午前6時に出発すれば、午後7時35分に戻れるという。航空会社の定期便がない帯広-富山間の場合、航空会社を乗り継ぐと、乗り継ぎ時間を含めて約3時間50分かかるが、チャーター便であれば約1時間50分で目的地に到着できるという。使用機材はホンダジェットの「エリート」または「エリートS」。チャーターの申し込みはJBZのパートナー企業経由で受け付ける。同社によると、今年6月時点で航空法などに準拠したホンダジェットのチャーターサービスは本国内では同社が唯一提供できるという。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:BZがチャーターに使用するホンダジェット】

4.HAC、24年度新卒CA採用 高卒以上、4月入社

日本航空グループで丘珠空港を拠点とする北海道エアシステム(HAC)は7月10日、客室乗務員の2024年度新卒採用を実施すると発表した。応募は郵送で受け付け、締め切りは7月30日消印有効。採用数は若干名で、2024年3月に高校、高専、専門学校、短大、4年制大学、大学院を卒業・修了見込みの人が対象。矯正視力や一定程度の英語力、札幌市内に居住か居住可能なことなどが条件となる。入社予定日は4月1日。選考は1次試験が書類、8月下旬の2次が面接(札幌か東京)、9月上旬の3次が面接、筆記、適性検査(札幌か東京)、9月中旬の役員面接は札幌の丘珠空港にあるHAC本社で実施する。選考は1次試験が書類、8月下旬の2次が面接(札幌か東京)、9月上旬の3次が面接、筆記、適性検査(札幌か東京)、9月中旬の役員面接は札幌の丘珠空港にあるHAC本社で実施する。【Aviation wire news】

5.JAXAの改良型ロケット「イプシロンS」の2段目モータ、地上燃焼試験中に爆発

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月14日、秋田県のJAXA能代ロケット実験場にてイプシロンSロケット第2段モータ地上燃焼試験を実施したが、試験中に爆発が生じたことが確認された。今回の試験は、イプシロンSロケット第2段モータを燃焼させ、モータの着火特性、燃焼推進特性、断熱材性能、TVCシステムに係る動作特性並びに振動などに係る環境条件を取得し、設計の妥当性を確認するために能代ロケット実験場の真空燃焼試験棟にて実施されたもの。JAXAによると、試験においてモータへの点火後約57秒に燃焼異常が発生したという。現在、初期消火を行っている状態にある。なお、イプシロンロケットは、6号機までのイプシロンロケット以降は、H3ロケットとのシナジー効果を発揮させることを目的に開発の第2段階となる改良型のイプシロンSロケットへと移行する計画で、開発が進められてきた。2段モータは、前世代の強化型イプシロンと比べて大型化され、推進薬量も約3t増量の約18tへと引き上げられたものへと変更されていた。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:2段モーター燃焼試験中に爆発した「イプシロンS」】

6.QPS研究所、小型SAR衛星6号機「アマテル-III」が取得した初画像を公開

QPS研究所は7月13日、同社の小型SAR衛星QPS-SAR 6号機「アマテル-III」の最初の画像(ファーストライト)を公開した。アマテル-IIIは同社ならびに北部九州を中心とした全国25 社以上のパートナー企業が開発・製造した小型SAR衛星で、2023年6月13日にスペースXの「Falcon 9ロケット」で打ち上げられ、打ち上げから約79分後に高度約540kmの軌道に投入され、それ以降、初画像の取得に向けた調整が続けられてきた。今回、取得に成功した画像の中には、衛星の進行方向であるアジマス分解能1.8m、レンジ分解能46cmを実現した画像も含まれており、QPS研究所の代表取締役社長CEOを務める大西俊輔氏は、「今回、QPS-SAR 6号機によって画像を取得することは、準リアルタイムデータ提供サービスにおいて重要なマイルストーン」と今回の成果を説明している。今回、取得に成功した画像は3枚。1枚目は2023年7月12日0:30(日本時間)に撮影された長野県松本市の様子で、分解能はアジマス分解能1.8m×レンジ分解能46cm(オフナディア角30度)、2枚目は2023年7月10日0:54(日本時間)に撮影された富山県富山市の様子で、分解能はアジマス分解能1.8m×レンジ分解能80cm(オフナディア角16度)、そして3枚目は2023年7月9日0:05(日本時間)に撮影された大阪府大阪市の様子で、分解能はアジマス分解能1.8m×レンジ分解能60cm(オフナディア角22度)となっている。【マイナビニュース】

【QPS研究所提供:SAR衛星「アマテルⅢ」が撮影した1枚(長野県松本市の様子)】

7. 鳥取砂丘に月面実証フィールドが完成! 宇宙産業の拠点へ

鳥取県は7月7日、鳥取砂丘エリアにて鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」および建設技術実証フィールドの完成を記念するオープニングセレモニーを行った。ルナテラスは、月面環境に似ているとされる鳥取砂丘の砂をそのまま活用しており、面積は約0.5haある。フィールド内は潜在ユーザーの声をもとに設計され、実証実験を行うための「平面ゾーン」や5~20度程度の「斜面ゾーン」、利用者が自由に掘削・造成が可能である「自由設計ゾーン」から構成されている。鳥取県といえば、どの市町村からも天の川が見える美しい星空をもつ「星取県(ほしとりけん)」として宇宙に関連した事業を行っているほか、「HAKUTO-R」ミッション1ランダーを月面着陸の目前まで到達させ注目を集めたispaceが、鳥取砂丘にて県全面協力のもと月面探査車の走行実験を行うなど、県を挙げて宇宙産業に取り組む姿勢をとってきた。そして今回、「鳥取砂丘月面化プロジェクト」として鳥取大学が保有する月面に限りなく近い砂が広がる広大な土地を整備。鳥取県と鳥取大学の2者は「鳥取大学と鳥取県との鳥取イノベーション実装事業」に関する基本協定を締結し、アルテミス計画など月面探査に参画する国内外の企業や研究機関による実証実験の拠点として宇宙産業を盛り上げていきたいとしている。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラスの様子」】

8.鉄腕アトムが宇宙へ! H-IIAロケット打ち上げ応援プロジェクトが始動

Space BDは、2023年8月26日に打ち上げ予定のH-IIAロケット47号機を応援するプロジェクトとして、「鉄腕アトムとロケット打ち上げ応援プロジェクト」を始動することを発表した。衛星打ち上げサービスや国際宇宙ステーション(ISS)利活用サービスを基幹事業として、宇宙の新たな利活用の創出を目指すSpace BDは、宇宙利用のすそ野拡大を実現する上で、宇宙への打ち上げ手段の確立が重要だと捉えているという。中でも日本の宇宙産業を盛り上げていくためには、国産ロケットの発展が大事な要素だと考えているとする。そして先般、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は、H-IIAロケット47号機を、2023年8月26日に種子島宇宙センターから打ち上げることを決定。同ロケットには、JAXAが開発したXRISM(X線分光撮像衛星)およびSLIM(小型月着陸実証機)が搭載される予定で、地球観測や月面探査において大きな進展となることが期待されている。【マイナビニュース】

【スペースBD提供】