KIT航空宇宙ニュース2022WK44

中国宇宙ステーション「CSS」が完成(CSS予想図)
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海外のニュース

1. アジア旅行需要、日本けん引で回復へ 23年後半にコロナ前同等に

巨大市場の中国がゼロコロナ政策を続けることから、アジア太平洋地域の旅行市場は日本がけん引する──。英国の航空データ分析会社「シリウム(Cirium)」は、日本を含むアジア太平洋地域の旅行市場の見通しをこのように分析している。コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前の2019年と同等の需要に回復するのは、1年後の2023年11月となると予測する。シリウムによると、日本国内の今年9月のキャパシティ(座席供給量)は、2019年同月比で17%減まで回復。10月の定期便の提供座席数は、国内線が1236万3968席、国際線が153万3693席で、コロナ前の2020年1月と比較すると国内線は3.4%増、国際線は73.0%減となっている。国内線は回復しているものの、国際線はコロナ前を大きく下回る状況が続いている。シリウムは10月に都内で説明会を開き、同社で航空機鑑定マネージャーを務めるハーマン・チェ氏が「日本政府の水際対策緩和により、国際線の需要が戻ることが見込まれる」と分析。香港から来日したチェ氏は「日本は海外の人に人気のある観光地」とし、日本政府の規制緩和によりアジア各国の航空各社が日本路線を復便させるとの見通しを示した。チェ氏は中国市場を「航空業界で2番目に大きな市場」とした上で、「中国政府のゼロコロナ政策により、依然としてボラティリティ(振り幅)が大きい」と分析。「中国政府の改善が難しい」(チェ氏)ことから、アジア太平洋地域は日本がけん引すると予測している。シリウムが予測した各市場の回復予測によると、全世界で回復するのは2023年10月を見込んでいる。主要市場では、欧州が同年8月、北米が10月、アジア太平洋が11月に回復すると予測している。一方、ロシアと旧ソビエト連邦の構成国からなるCIS(独立国家共同体)は、ウクライナ侵攻による制裁の影響により回復が2025年以降にずれ込むとみている。【Aviation Wire News】

2.「中国宇宙ステーション」完成へ – 人類の新たな前哨基地

中国有人宇宙飛行工程弁公室は2022年10月31日、中国宇宙ステーション(CSS)の科学実験モジュール「夢天」の打ち上げに成功した。夢天はその後、CSSのコア・モジュールとのドッキングに成功。昨年4月から始まったCSSの建設は、ひとまずの完成を迎えることとなった。今後、宇宙飛行士の滞在をはじめ、さまざまな宇宙実験の実施、さらには宇宙望遠鏡モジュールの打ち上げなども計画されており、米国やロシア、欧州、日本などが運用する国際宇宙ステーション(ISS)と並ぶ、人類の宇宙の橋頭堡として活躍が期待される。現在CSSには、有人宇宙船「神舟十四号」ミッションの、陳冬宇氏、劉洋氏、蔡旭哲氏の、計3人の中国宇宙飛行士が滞在しており、夢天の機器の立ち上げや運用開始に向けた準備などを行うことになっている。中国宇宙ステーション(CSS)は、中国が建設を進めている宇宙ステーションで、宇宙飛行士の長期滞在、宇宙医学、科学実験、技術実験に活用することを目的としている。CSSは高度約380km、軌道傾斜角(赤道面からの傾き)41.5度の軌道を周回している。これはISSよりも高度はわずかに低く、軌道傾斜角もわずかに小さい。完成時の質量は約90tで、現在運用中の国際宇宙ステーション(ISS)、かつてソ連・ロシアが運用していた「ミール」に次ぐ規模の、大型の宇宙ステーションとなる。設計寿命は最低10年、また宇宙飛行士による適切なメンテナンスを行えば15年はもつという。内部はタッチスクリーンをもったコンソールがあるなど、ISSと比べ近代的なものとなっている。今回打ち上げられた夢天は、CSSの3基目のモジュールであり、2基目の科学実験モジュールでもある。夢天とは、「天を夢見る」という意味だという。全長は約17.88m、直径4.2m、打ち上げ時の質量は約23tにもなる巨大な構造物である。さらに全長27mの大きな太陽電池パドルを2翼もつ。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:中国宇宙ステーション完成予想図】

3.5Gは、飛行中のアビオニクスに多くの厄介な故障を引き起こした可能性がある

連邦航空局 (FAA) は、新しい5G携帯電話ネットワークが今年、約80件の航空機システム干渉を引き起こした可能性があると考えており、最新世代のモバイル接続が1月に稼働して以来、パイロットはさまざまな誤動作を報告している。「FAAは5G干渉の可能性について数百件の報告を受けており、9月中旬の時点で、約80件で 5Gを除外できなかった」と FAAは語っている。「これらのいずれも安全関連の影響をもたらさず、オートスロットルやスピードブレーキ/スポイラーなどの直接的な航空機制御入力に影響を与えるものはなかった。」とも語っている。しかし、航空宇宙産業がここ数週間の間に、米国連邦通信委員会 (FCC) に、5G信号が無線高度計に干渉するのを防ぐための措置を講じるよう携帯電話会社に要求するよう要請したため、この報告書が明らかになった。FAAは、5G干渉が、報告された80件の問題の原因であると最終的に判断したわけではないと述べているが、リスク分析の目的でそう仮定している。また、干渉を軽減するために講じられた措置のおかげで航空は安全であると付け加え、携帯電話会社が数万のアンテナを使用して全国の地域で5Gを展開しているが、重大な飛行上の問題は発生していないと指摘している。携帯電話業界はまた、5Gは航空機にとって安全であると主張している。米国企業は、FCC オークションを通じて 3700~3980 MHz 範囲へのアクセスに 810億ドルを入札した後、2021年に必要な帯域幅を確保した。最初は最大 3800MHzで送信でき、2023年後半には最大3980MHzにアクセスできるようになる。電波高度計は、4200~4400MHz前後の非常によく似た範囲で送信している。携帯電話業界は、「Cバンド5Gと航空交通が安全に共存できるようにするために、FAA、FCC などと協力しています」と付け加えている。【Flightglobal News】

【AT&T提供:5Gアンテナを設置する作業員】

日本のニュース

1. トキエアのATR72、新潟空港へ到着 制服もお披露目

新潟空港を拠点に2023年の就航を目指すとしている「TOKI AIR(トキエア)」の仏ATR製ATR72-600型機の初号機が11月5日午後、新潟空港に到着した。また、客室乗務員などが着用する制服もお披露目した。トキエアのATR72は1クラス72席で、アイルランドの航空機リース会社NAC(ノルディック・アビエーション・キャピタル)からリース導入。メーカーのATRは、現地時間10月10日にNACを通じてトキエアに機体を引き渡したと発表した。当初は今春に受領予定で、およそ半年遅れで受領した。初号機はATR側のパイロットの操縦で仏トゥールーズを10月31日に出発し、ギリシャのイラクリオン国際空港、アラブ首長国連邦ドバイのアール・マクトゥーム国際空港、インドのナーグプル空港、タイのバンコク・ドンムアン国際空港を経由。最終経由地であるフィリピンのニノイ・アキノ国際空港(旧称マニラ国際空港)を現地時間5日午前7時52分に出発し、新潟には午後3時22分ごろ到着した。着陸前には滑走路を低空で通過する「ローパス」も行われた。トキエアの長谷川政樹社長によると、今後は1週間程度で機体の登録をフランス籍から日本籍に変更して登録記号をJA01QQとし、地上での訓練から始めるという。一方、飛行訓練の開始時期は調整中としており、明確になっていない。今後「航空会社」を名乗って事業を行うためには、国土交通省からAOC(航空運送事業の許可)を取得する必要があり、安全性や持続的な運航が可能かを規定や訓練体制などを基に審査される。当初トキエアは国交省の東京航空局(TCAB)に対し、7月下旬にも申請する計画だったが、現時点で今月以降になる見通し。就航は今年秋ごろを目指していたが、現時点では2023年3月下旬以降を予定。5日は明確な時期の言及はなかった。計画路線は、新潟-札幌(丘珠)、仙台、中部、神戸の4路線で、最初の就航地は丘珠、2023年10月以降に仙台、12月以降に中部や神戸への就航を計画している。また、首都圏では成田への就航を目指す意向を示している。また、客室前方を貨物室に変更できるオプション「カーゴフレックス(CargoFlex)」を初採用する2号機は、受領時期を調整中。ATR72-600の場合、44席と1400kgの追加貨物を搭載できる。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:新潟空港に到着したトキエアエア初号機と制服を披露するトキエア社員】

2.一旦立ち止まる」から2年 特集・スペースジェットの現在地

三菱重工業が国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」の開発を事実上凍結して2年が過ぎた。2020年10月30日に、「一旦立ち止まる」と独特の表現で明らかにし、国が機体の安全性を証明する「型式証明(TC)」の取得に必要な文書作成は続けるものの、飛行試験は中断。6度もの延期で2021年度以降としていた納期は、泉澤清次社長が「設定していない」と、この時点で未完の航空機になる可能性が高まっていた。11月1日に発表した2022年4-9月期(23年3月期第2四半期)決算では、「SpaceJetの開発減速に係る偶発負債」に言及。「当社は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響を受けた民間航空機市場の不安定化等を踏まえ、SpaceJetの開発活動を減速することを2020年10月に公表した。これによりSpaceJetの量産初号機の引き渡し予定時期を見通すことは困難となり、これを受けた顧客等との協議の結果等により追加の負担が発生し、将来の財政状態及び経営成績に影響が生じる可能性がある」と、今後航空会社などとの話し合いによっては、違約金などの支払いが経営に影響する可能性に触れている。米ワシントン州にあるスペースジェットの飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」は今年3月末で閉鎖。米国で試験を行っていた4機の飛行試験機のうち、3号機(登録記号JA23MJ)の日本国籍機としての登録は3月で抹消され、機体は解体された。この状況で、航空会社に引き渡せる機体が完成するとは考えにくい。 「現状は立ち止まった時から大きく変わっていない」と語る泉澤社長は、市場動向について「狭胴機(ナローボディー機)は戻ってきているが、リージョナルは少し遅れており、市場回復に時間が掛かっている」と述べた。スペースジェットを取り巻く環境は2年前と変わっていない、という認識のようだ。「やりたいという気持ちはあっても、マーケットがついてこない、機が熟していないと進められないので、相克の中で検討している」と泉澤社長は説明するが、経済産業省からこれまでに約500億円の補助金などが投じられており、引くに引けない状況とも言える。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:2019年エアショー終了後パリのルブルージェ空港を離陸する「Space Jet」】

3.スカイマークが再上場申請 ANAは株主、JALは手荷物連携

スカイマークが東京証券取引所に再上場を申請していると、日本経済新聞の電子版が11月2日夜に報じた。スカイマークは「当社が発表したものではない」とコメントした。2015年に経営破綻後、2020年までに再上場を計画していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、2020年4月に申請を取り下げた。今年7月の搭乗率は2年5カ月ぶりに7割を超え、8月と9月は8割前後とコロナ前の水準に近づいていることから、再上場を判断したもようだ。機材更新の停滞で経年機も増えており、コロナで痛んだ財務体質の改善や機材更新などに資金を充てるとみられる。

今年6月に発表した2022年3月期通期決算は、純損益が67億2900万円の赤字(21年3月期は163億4200万円の赤字)と、赤字幅を圧縮。本業のもうけを示す営業損益は166億9400万円の赤字(316億7500万円の赤字)で、営業益ベースでも赤字幅を大幅に圧縮している。スカイマークでは、再上場を判断する目安として、繁忙期である7-9月期の実績がコロナ前に近い水準に戻ることとしている。7月の搭乗率は73.2%、8月は80.1%、9月も77.1%と、90%前後だったコロナ前2019年の水準に近づきつつある。一方で、スカイマークは機材更新が滞っており、省燃費の次世代機導入が必要な時期に入っている。スカイマークはボーイング737-800型機(1クラス177席)を29機保有。このうち26機がリース返却の目安となることが多い機齢8年を超えた機体で、最も古い機体は15年となる。再上場による資金調達で、財務体質の改善や機材更新など、今後の成長戦略を描く上で必要な投資を進めるとみられる。スカイマークの株主であるANAと、実際の運航で連携するJAL。再上場後どのように動くかも注目される。【Aviation Wire News】