KIT航空宇宙ニュース2023WK26

立命館大学が将来の人類の生活圏の拡大を目指す宇宙地球探査研究センターESECを設置し月や火星での生活を可能とする技術を研究。
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK26

海外のニュース

1. ユニバーサル・ハイドロジェン水素改造ダッシュ8を飛行試験のためにモハーベにフェリー

ユニバーサル・ハイドロジェンは、2025年の認証目標に先立って飛行試験を再開するため、水素燃料電池を搭載したデ・ハビランド・カナダ・ダッシュ8-300デモンストレーターをカリフォルニア州モハーベへフェリーした。フェリーの飛行中、「水素パワートレインは離陸ごとに最大限に活用され、フェリーの最初の3行程では離陸後にスロットルダウンされた」と同社は述べている。「最終レグでは、水素燃料電池パワートレインが全飛行時間にわたって使用され、180海里以上の飛行距離と1時間以上の飛行時間を記録した。これは、これまでの水素燃料電池パワートレインによる最長飛行です。」と述べた。ユニバーサルは、エアバスとレイセオン・テクノロジーズの元幹部ポール・エレメンコ氏によって数年前に設立され、最終的には航空向けの水素燃料供給ネットワークを開発する計画だと述べた。このネットワークには、航空機内外で交換できる「モジュール」と呼ばれる携帯用水素燃料タンクが含まれる予定。【Flightglobal News】

【Universal Hydrogen提供:モハーベに着いたユニバーサル・ハイドロジェン社の改良型ダッシュ 8-300】

2.  JOBY、最初の「量産プロトタイプ」EVTOL エアタクシーを公開

ジョビー・アビエーションは、カリフォルニア州マリーナのパイロット生産ラインで組み立てられた最初の電動エアタクシーを公開した。 水曜日の大公開に先立ち、同社はFAAから特別耐空証明書を受け取り、いわゆる「量産プロトタイプ」の最初の飛行試験をクリアしたと発表した。 カリフォルニアに本拠を置くこのeVTOLメーカーは、製造パートナーであり最大の投資家であるトヨタと共同でマリーナの生産施設で開催された特別イベント中に、エアタクシープロトタイプの最初の量産試作 機を公開した。ジョビーは水曜日、トヨタ・モーター・ノース・アメリカの社長兼最高経営責任者(CEO)「テッド」小川哲夫氏を取締役会に任命したことも発表した。 トヨタはJobyのパイロット生産ラインの設計と構築を支援しており、当該自動車メーカーは今後もJobyのパイロット付き4人乗りeVTOLエアタクシーの生産と組み立てにおいて重要な役割を果たす予定。ジョビーは、トヨタの製造専門知識を活用して建設する大規模な第1期生産施設の建設場所をまだ検討中だと述べた。ジョビー社が新たに明らかにした量産試作機は、同社が最大1億3,100万ドル相当のAgility Prime契約の一環として米空軍に納入する最大9機の航空機のうちの最初の1機となる。最初の2機の納入は2024年初めに南カリフォルニアのエドワーズ空軍基地で予定されている。最初の航空機が到着すると、それは顧客への eVTOL 航空機の史上初の納入を意味する。Joby は 2024 年までに eVTOL 航空機の型式認証を取得する予定で、同社は 2025 年までに米国でエアタクシーサービスを開始および運営する予定。同社は 2月に、FAA型式認証プロセスの5つの段階のうち2番目の段階を完了したと発表した。【Future Flightニュース】

【Joby Aviation提供:Jobyの最初の量産プロトタイプ5人乗りeVTOLエアタクシー】

3. MTUは燃料電池をゼロエミッション飛行に適した技術とみなしている

ドイツの大手航空機エンジンメーカーである MTU Aero Enginesは、航空業界に革命をもたらす可能性のある液体水素燃料電池推進システムの開発を積極的に支援している。CEOのラース・ワグナー氏によれば、将来的にゼロエミッション飛行を実現するには燃料電池が鍵となるという。パリ航空ショーでのスピーチの中で、ワグナー氏は燃料電池技術に対するMTUの取り組みを強調した。同氏は、水素燃料電池を搭載したリージョナル航空機やコミューター航空機が2030年代半ばまでに就航すると考えている。この技術は二酸化炭素排出量を大幅に削減し、持続可能な航空旅行への道を開く可能性を秘めていると語った。MTUは、燃料電池推進システムの実証を目的としたプロジェクトでドイツのDLR航空宇宙研究所と協力している。この計画には、19席のドルニエ 228航空機を改造して、この最先端技術を組み込むことが含まれている。改造された航空機は、2020年代半ばまでに飛行する予定としている。ワグナー氏は、最大1,000 海里 (1,850 キロメートル) の航路を飛行できる 100席の航空機における燃料電池推進システムの「スイートスポット」を構想している。このような航空機は2050年頃に利用可能になる可能性がある。この目標を達成するために、MTUはアウグスブルクに本拠を置く MTエアロスペース社に液体水素燃料システム開発の専門知識を求めている。このシステムのテストは今年後半に開始される予定。【Flightglobal News】

【MTU社提供:水素燃料電池推進機に改造されたドルニエ228型機】

日本のニュース

1. ZIPAIR、CA募集 経験不問で23-24年度入社

日本航空傘下のZIPAIR(ジップエア)は6月30日、客室乗務員の募集を始めた。入社時期は今年度と2024年度で、客室業務のほか地上旅客係員の業務やサービス企画なども業務内容に含まれる。募集職種は「Z_ONE」と社内で呼んでいる職種限定雇用で、採用予定人数は120人程度。訓練期間中は契約社員で、審査に合格後は正社員となる。入社後は乗務経験の有無や経験年数に応じて、客室業務か空港旅客サービス業務から始める。一定期間を過ぎてからは、全員が客室、空港旅客業務に従事しつつ、一部の人はサービス企画などにも携わる。また、本人の希望などに応じて、入社後最短4年未満で管理職へ登用する制度を用意している。応募資格は、6月末時点で専門学校、高専、短大、4年制大学、大学院をすでに卒業・修了し、10月以降の会社が指定する時期に入社できる人と、今年4月から2024年3月までにこれらの学校を卒業・修了見込みで、2024年4月以降の会社が指定する時期に入社できる人。心身ともに健康であることや、スタンバイ勤務時に出社指示があった場合、成田空港へ90分以内に出社できること、日本語が母国語ではない場合は日本語能力試験(JLPT)のN1、またはビジネスレベルの日本語会話や読み書きが可能であることなどが条件となる。客室乗務員としての経験は不問で、TOEIC 600点以上の英語力が望ましいとしている。エントリーシートは、ZIPAIRの「マイページ」から入力可能で、提出期限は7月12日午後1時まで。期限までにWeb適性検査をパソコンで受ける必要があり、スマートフォンやタブレットでは受けられない。書類選考の結果は7月中旬ごろ案内する予定で、1次選考は7月22日から24日、最終選考は7月30日から8月7日となっている。【Aviation Wire News】

2. スターフライヤー、新機材A320neoが北九州到着

スターフライヤーの新機材エアバスA320neoの初号機が6月26日午後、本社のある北九州空港へ到着した。7月4日に就航する。乗客から要望が多かったWi-Fiによる機内インターネット接続サービスを無料で提供するほか、大型化した手荷物収納棚などを備えるエアバスの新内装「エアスペース」を、日本の単通路機で初導入する。A320neoの座席数は1クラス162席。現行機のA320従来型(A320ceo)は同150席で、12席増えた。7月4日に運航を開始し、初便は北九州を午後4時30分に出発する羽田行き7G86便となる。5日以降は羽田発着の北九州と福岡、関西の3路線に投入し、投入便にはウェブサイトの空席照会の便名に「Wi-Fi」と表示する。Wi-Fiは英インマルサットが提供するグローバル・エクスプレス(GX)衛星のKaバンドを利用し、無料提供する。スターフライヤーは2006年3月の就航時から全席に個人用モニターを導入しているが、A320neoでは廃止し、無料ネット接続サービスに置き換える。2種類あるエンジンは、当紙が2022年4月に報じた通りCFMインターナショナル製「LEAP-1A」を選定した。また、日本の単通路機では初めてエアバスの新客室「エアスペース」を導入。大型化した手荷物収納棚のほか、LED照明や新しい窓の日よけ、抗菌仕様などを採用する。これまで5つのキャリーバッグを収納できた手荷物収納棚は、エアスペースにより最大8つ収納できるようになる。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:北九州空港に到着したスターフライヤーのA320neo型初号機】

3.  保安検査、空港管理者に主体移行へ 利便と厳格、両立狙う=25年度以降

国土交通省航空局(JCAB)は、現在は航空会社が実施主体となっている各空港での保安検査について、空港管理者への移行を含めた見直しの方向性を取りまとめたと6月23日に発表した。有識者会議で2022年から検討を進めていたもので、2025年度以降に順次運用を開始する見通し。現在の保安検査は航空各社が実施主体となり、警備会社などに実際の検査を委託している。移行後は、羽田や那覇などの国管理空港は国が、成田と中部の会社管理空港は空港会社が、地方管理空港は管理する地方自治体が担う。関空など、所有権を国に残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で民営化したコンセッション空港については、契約変更後に運営会社が保安検査も担う。今後は適切な保安料金や関係者との費用負担の割合、空港規模を踏まえた導入時期や方法、補償のあり方などを検討する。今年夏ごろに有識者会議で具体的な検討を進め、秋ごろの中間取りまとめ、2024年春ごろの最終とりまとめを経て、2025年度以降に順次運用を開始する見通し。国交省は、保安検査体制の改善を喫緊の課題と位置付けている。現状は就航する複数の航空会社が主体のため、トラブル発生時の迅速な対応や保安水準の維持に課題があるという。また、旅客利便と検査の厳格性を航空会社が担うことへの懸念もあるとしている。海外では、空港管理者が主体となる事例が多くみられ、検査の厳格性と旅客の利便性を両立させている。米国では運輸保安局(TSA)が実施主体となり、実際の検査も担っている。英国やフランス、豪州、シンガポール、韓国、中国では警備会社が担っているものの、各空港の管理者が実施主体となっているという。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:羽田空港第一ターミナルの保安検査場入口】

4.  ORC新機材ATR42お披露目7/1就航

長崎空港を拠点とするオリエンタルエアブリッジは6月24日、7月から定期便に投入する新機材、仏ATR製ターボプロップ(プロペラ)機ATR42-600型機の初号機(登録記号JA10RC)の客室などを関係者に公開した。長崎離島路線用の機材で、22年前に就航したボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-Q200型機を更新していく。新機材のATR42は、2001年7月に就航したQ200の後継機。座席数は1クラス48席で、Q200の39席から9席増える。リクライニングする本革シートで、従来よりも足もとにゆとりがあるという。照明はLEDを採用し、従来より座席上の手荷物収納棚(オーバーヘッドビン)が大きくなる。化粧室(ラバトリー)内には折りたたみ式の「おむつ交換台」を、日本で導入された同型機では初めて装備。また、離島路線を飛ぶことから、患者を運ぶストレッチャーにも対応している。機体デザインは「飛翔する海鳥」がコンセプト。五島灘を大きく羽を広げて悠々と飛ぶ海鳥をイメージし、白い機体の前方と後方にラインを配した。新機材導入に合わせ、新しいロゴマークを制定し、「空」「海」「島」をビジュアルイメージとして、空を水色、海を青色、島を緑色で表現した。英文ロゴタイプは「安全安心な高い信頼性を感じさせる企業イメージを表現」するため、安定感のあるボールド系にしたという。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー・カナダ製PW127Mを2基搭載。エンジン1基あたりのプロペラのブレードがQ200の4枚からATR42は6枚に増えたことで、従来よりも静音性が向上したという。コックピットは、エアバスA380型機の技術を取り入れたグラスコックピットになっている。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:ORCのATR42型機の機内】

5.  立命館、将来の人類の生活圏の拡大を目指す宇宙地球探査研究センターを設置

立命館大学は、「立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC:Earth & Space Exploration Center、イーセック)」を2023年7月1日に設立することを発表した。ESECは、月・惑星における人類の生存圏拡張と、将来的な居住・生活圏構築に先駆けた探査拠点となる宇宙開発・インフラ構築に取り組む日本初の研究組織という位置づけで、センター長には同大総合科学技術研究機構の佐伯和人教授が就任するほか、総勢25名を超える探査や拠点開発に関わる多様な領域を専門とする研究者が参加する予定となっている。同大 仲谷善雄 学長は、設立に際し、「宇宙を取り巻く情勢はこの数年で大きく変化し、民間で月着陸が試みられるなど、日常に近いところまできた。これまでは、発見型の探査が中心であった宇宙・地球に関する研究は月面基地建設を目指すアルテミス計画に代表されるように、人間の生存圏の拡大に向けたフェーズに移ってきた。宇宙開発に民間企業が参入しやすい環境が整えられることで、2040年には120兆円市場に成長することが期待される。大学に対する人材育成への期待も高まっていく。立命館大学でも、今後の5~10年が日本の宇宙探査の将来を見据えた重要な時期と認識しており、高度で個性的な宇宙探査関連の研究を展開することで、日本の宇宙開発や平和利用に貢献する存在になりたいと思い、今後の研究展開のフラッグシップとなる存在としてESECの設立を決めた」と、現状の宇宙探査・開発に対する認識と、その中における大学の役割を踏まえた判断であることを強調。「国内外・学内外との連携による新たな価値創出を目指す」と、ESECでの活動に対して期待を示した。【マイナビニュース】

【立命館大学提供:ESECの目指す目標】