KIT航空宇宙ニュース2024WK39
海外のニュース
1. 737のラダー不具合、NTSBが緊急安全勧告 ユナイテッドの737MAXで2月発生
NTSB(米国家運輸安全委員会)は現地時間9月26日、ボーイング737型機の一部にラダー制御システムの不具合がある可能性を指摘し、ボーイングとFAA(米国連邦航空局)に対し、緊急安全勧告を出した。ユナイテッド航空の737-8(737 MAX 8)で、ラダー不具合が今年2月に米ニュージャージー州のニューアーク・リバティー国際空港で発生したことを受け、調査が行われていた。NTSBによると、問題が発生したユナイテッド航空の737 MAXは、着陸時にラダーペダルが動かなくなり、機長がノーズホイールを使い機体の方向を制御した。このトラブルによる機体の損傷や乗客乗員のけがはなかったが、NTSBはこのトラブルを重視し、調査を進めてきた。調査の結果、当該機のラダー制御部品の一つである「ロールアウト誘導アクチュエーター」が原因だったと判明。製造元のコリンズ・エアロスペースで実施したテストの結果、このアクチュエーターが低温環境下で機能が著しく低下することが確認された。また、テスト対象の部品には湿気の浸入がみられ、製造過程でベアリングの組み立てに不具合があったことが原因とされている。NTSBはFAAに対し、該当するアクチュエーターを搭載している機体の運航について、適切な対応を取るよう要請。アクチュエーターの取り外しや、適切な対応方法を定めることを推奨している。また、FAAが該当アクチュエーターの取り外しを決定した場合、他国の航空当局にも通知し、世界的な対応を促すよう勧告した。調査は現在も継続中で、追加の情報が発表される可能性があるという。【Aviation wire news】
【Yahooニュース提供:ユナイテッド航空の737MAX-8】
2. 超音速実証機XB-1、4回目の飛行試験でマッハ0.6到達 JAL出資の米ブーム
超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は現地時間9月21日、4回目となる超音速飛行の技術実証機「XB-1」の飛行試験に成功した。前回から8日後の実施で、年末までに超音速飛行の達成を目指す。日本航空も出資しており、実際に量産するオーバーチュアは、ユナイテッド航空などが発注している。4回目の飛行試験は、これまでと同じカリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港で21日に行われ、チーフテストパイロットのトリスタン“ジェペット”ブランデンブルグ氏が操縦桿を握った。最高高度は1万6150フィート(約4923メートル)、速度はマッハ0.617(約756キロ)に達し、総飛行時間は約48分だった。今回は最高速度を更新したほか、FES(フラッター励振システム)を飛行中に初めて使用し、225-300ノットでの操縦性の品質チェック、2.78Gまで加速し「ウィンドアップターン」と呼ばれる飛行試験技術で高いGをかけた。また、着陸装置は225ノットで格納された。超音速に達するまでに約10回の亜音速飛行を予定しており、まもなく半分に達する。今後の飛行試験では、着陸装置を離陸直後に格納するなど、実際のフライトの状態に近づけていく。実証機のXB-1は2人乗りで、主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンは既存のGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使ってマッハ2.2(時速換算2335キロ)の実現を目指す。ブームは、XB-1で超音速飛行の技術を検証し、同社初の超音速旅客機であるオーバーチュアの開発につなげる。オーバーチュアはエンジンが4基となり、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。巡航速度は洋上で超音速のマッハ1.7、陸上で亜音速のマッハ0.94、ペイロード航続距離は4250海里(7871キロ)を計画。乗客定員は65から80人で全席ビジネスクラスになる。外寸は全長201フィート(約61メートル)、翼幅106フィート(約32メートル)、全高:36フィート(約11メートル)、内寸は全長79フィート(約24メートル)、通路の最大高さ6.5フィート(約2メートル)、2つのLRU(列線交換ユニット)、4系統のデジタルフライバイワイヤ、エンジンは100%SAF(持続可能な航空燃料)対応、騒音レベルはICAO(国際民間航空機関)のチャプター14、FAA(米国連邦航空局)のステージ5としている。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:4回目の飛行しkジェンでマッハ0.6に到達した超音速実証機XB-1】
3. インドネシアのeVTOL企業Velaが技術実証機の計画を進める
インドネシアの電動垂直離着陸(eVTOL)航空機開発企業Velaは、Alpha機の開発作業を進めている。ヴェラのプログラム・運営担当ディレクターのケビン・ファン氏によると、同社は2024年中に3分の1のスケールモデルを完成させ、機体はすでに30時間飛行しているという。ヴェラは都市部の航空交通インフラの開発に取り組んでいる地方当局と協議を重ねてきた。63人のエンジニアを雇用する同社は、2025年末までに初飛行を行う予定の無人プラットフォームとなる初の技術実証機を製造している。ファン氏は、風洞試験でアルファの構成が確認されており、変更は軽微なものになると述べている。ブラジルのイブ社の eVTOL 設計と同様に、アルファには垂直上昇用の 8 つの電動モーターと、前進飛行用の 1 つの推進プロペラが搭載されている。アルファの運用は2029年か2030年に開始され、運用開始後3~4年以内に700機の需要が見込まれると予想している。インドネシアが導入国となるが、ベラは国際認証、具体的には米国連邦航空局による認証も目指している。【Flightglobal news】
【Flightglobal提供:バリ島の航空ショーで展示されたアルファのデモンストレーター機】
4. アメリカン航空のCEO、航空会社の2050年ネットゼロ目標に警鐘を鳴らす
アメリカン航空の最高経営責任者は、航空会社は2050年までにカーボン・ネット・ゼロを達成するという約束を確実に達成できるほどのスピードで動いていない、と警告した。アメリカン航空のCEOで世界航空連合ワンワールドの会長を務めるロバート・アイソム氏は、航空会社は2021年10月にボストンで開催されたIATA年次総会で決議されたネットゼロへの移行目標に関して大胆な決断と行動をとってきたと述べた。しかし、9月24日にマイアミで開催されたIATA世界持続可能性シンポジウムの基調講演で、航空会社の業務内での決断と行動だけでは「変化をもたらすには不十分だろう」と付け加えた。そのため、アイソム氏は警鐘を鳴らす必要があると述べた。「我々は十分な速さで動いていない。もっと大胆かつ積極的な行動を取らなければ、目標を達成できない恐れがある」と彼は語った。イソム氏は、実行すべきこととして、より多くのイノベーターや科学者が「地平線の彼方」の技術に取り組む必要性を挙げた。民間部門と公共部門のより多くの利害関係者が、航空炭素削減に関与する必要がある。政府は、航空機が空域の混雑により不必要に燃料を燃やし、排出物を発生させないように、より優れた航空管制技術に投資する必要がある。そして、より持続可能な航空燃料(SAF)の生産は「極めて重要」だとイソム氏は述べた。「供給は増えているが、それでも必要な量にははるかに及ばない」SAFはジェット燃料よりも大幅に高価であるため、ネットゼロへの移行コストは「信じられないほど高いが、それは選択肢ではない」とアイソム氏は述べた。【Flightglobal news】
【アメリカン航空提供:アメリカン航空CEOロバート・アイソム氏】
5. 空飛ぶ燃料電池: MTU Aero Engines が LH2 燃料システムをテスト
MTU Aero Enginesは、ゼロエミッション飛行への道のりで重要なマイルストーンに到達した。Flying Fuel Cell™ (FFC) 用の液体水素燃料システムの数週間にわたるテストを無事に完了した。 「テストでは、システム技術が安全で信頼性が高く、期待どおりに機能することが示された。そのため、燃料電池への事前調整済み水素の規制された、必要に応じての供給を保証できる」と、ミュンヘンの MTU の FFC 主任エンジニアである Barnaby Law 氏は語った。彼はキャンペーンの成功を喜んでいます。FFC の開発により、ドイツの大手エンジン メーカーはパワートレインの完全電動化に向けて着実に前進している。MTU Aero Enginesは、MT Aerospace AG と共同で、タンク、センサー、熱交換器、バルブ、安全システム、制御装置で構成される商業航空用の完全な液体水素燃料システムを開発している。MT Aerospace は液体水素タンクを担当し、アウクスブルクの本社で最初のシステムのテストに成功した。現在、MTU がそれに続いています。テストは、FFC の実際の動作媒体である液体水素を使用して行われた。アウクスブルクで行われたテストでは、物理的特性により取り扱いが容易な液体窒素が使用された。MT Aerospace の未来技術担当ディレクターである Günther Schullerer 博士は、「機能性が完全に確認されたので、軽量エンジニアリング、統合コンセプト、および最適化されたスペース利用に共有スキルを集中できる」と述べている。基本原理は、水素は液体の状態で輸送され、約-250°C の温度で保管される。冷却されたLH2は動作中に加熱され、気体状態に変換される必要がある。その後、定義された質量流量が燃料電池に供給される。「このコンセプトは、航空機に必要なすべてのセンサーと機能を含め、現在検証されている。」MTU のテクノロジー & エンジニアリング アドバンスト プログラム担当上級副社長である Claus Riegler 博士は、次のようにまとめている。「これは優れた出発点です。これにより、さまざまな航空機モデルに適した、信頼性が高く、高性能なLH2燃料システム ソリューションを提供できるようになります。」【Aviation Week】
【Flightglobal提供:MTU Aero EnginesのAugsburg本社の液体水素燃料燃料電池の実験装置】
日本のニュース
1. スペースジェット、三菱重工が旧三菱航空機の債権放棄 3月末に清算終了へ
三菱重工業は9月27日、傘下でジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」を開発していた連結子会社のMSJ資産管理(旧三菱航空機)の債権約6400億円を放棄する協定案に同意すると発表した。清算手続きは今年度末の2025年3月末までに終える見込み。MSJ資産管理の債権者である三菱重工は、協定案に同意することを27日に決定。協定案が10月上旬に開催予定の債権者集会で可決され、地裁に認可されると、三菱重工による貸付金などの債権約6400億円が放棄される見通し。三菱重工は、MSJの開発中止を2023年2月7日に正式発表。同年4月25日に三菱航空機の社名を「MSJ資産管理株式会社」に変更し、今年7月4日付で東京地裁に対して特別清算開始を申し立てたと発表した。今年3月末の連結資本合計に対する当該債権の割合は約27%。連結子会社への債権放棄であることから、本件や一連の清算手続きに伴う三菱重工の業績への影響は、個別と連結ともに軽微の見込み。スペースジェットは、2008年3月27日に持株会社化前の全日本空輸(ANA/NH)から確定15機とオプション(仮発注)10機の最大25機を受注して事業化。2014年8月28日には、日本航空(JAL/JL、9201)から32機すべてを確定で受注した。7日時点の総受注は267機で、このうち確定受注は153機、オプションと購入権は114機だった。当初の納期は2013年だったが、その後2014年4-6月期、2015年度の半ば以降、2017年4-6月期、2018年中ごろ、2020年半ばと延期を重ね、2020年2月6日には6度目の延期が発表されて2021年度以降としていたが、未完の航空機となった。【Aviation wire news】
2. 福岡空港、国際線ラウンジ9/27刷新 滑走路の眺めと福岡らしさ演出
福岡空港を運営する福岡国際空港会社(FIAC)は、国際線の航空会社ラウンジ「ラウンジ福岡」を27日にリニューアルオープンする。滑走路に面する位置に移転し、広さは従来の2倍以上に拡大。館内を2つのゾーンに分け、利用者のニーズに合ったエリアを設けた。25日は報道関係者向けの内覧会が開かれた。新ラウンジは、これまでと同様に出国審査後の制限エリアに設けた。場所は国際線ターミナルの3階から4階に移転し、滑走路を一望できるラウンジとなり、広さは従来の約500平方メートルから1242平方メートルに拡大。席数は161席から216席に増え、ゆったりとした空間に仕上げた。ラウンジ内は左右でゾーンを分け、家族連れなどが利用しやすい「リラックスゾーン」と、ワークスペースなどを設ける「ビジネスゾーン」に分別。リラックスゾーンは300平方メートルに109席を設け、ソファータイプの座席を配置することで、複数人で利用しやすいエリアとする。ビジネスゾーンは240平方メートルに93席用意し、カウンター席やウェブ会議対応の専用ブースも設置する。また、VIPルーム(14席)も設けた。空間演出は「福岡造り」をコンセプトとし、博多人形や大川組子、博多織、小石原焼など福岡の伝統工芸品を随所に配し、福岡らしさを演出。ソファやテーブルには県産の「い草」を取り入れ、久留米特産の銀梅花を使用した福岡空港オリジナルのアロマも提供する。このほか、提供する食事も従来の約15種類から30種類へ拡大。福岡名物のとんこつラーメンや明太子などを取り入れたメニューを用意し、アルコール類は県産の日本酒や焼酎、ワインも用意しており、訪日客には福岡や九州、日本を感じて出発してもらう。営業時間は出国審査の開始時間から最終便の搭乗開始まで。契約航空会社のビジネスクラス利用客などに加え、世界各地の空港でラウンジを利用できるサービス「プライオリティ・パス」会員も利用できる。【Aviation wire news】
【Aviation wire提供:福岡空港に新設された福岡らしさを演出したラウンジ】
3. スターフライヤー、地上係員採用15人 中途と25年卒
スターフライヤーは9月24日、地上係員(グランドスタッフ)の採用を始めた。中途と2025年卒秋採用の2種類で、入社時期は中途が12月1日、秋採用は4月1日を予定する。15人程度を採用し、エントリー方法は入社時期により異なる。中途の応募資格は、専門学校・高等専門学校・短期大学・4年制大学・大学院を卒業・修了している人。指定時期に入社可能な場合、2025年3月までに卒業・修了見込みの人も応募できる。エントリーは同社ウェブサイトの採用ページで受け付ける。エントリーは10月6日正午まで。ウェブテストの受験締切は同日午後11時59分。秋採用の応募資格は、2025年3月までに専門学校・高等専門学校・短期大学・4年制大学・大学院を卒業・修了見込みの人か、今年3月までに卒業・修了した人。エントリーは「リクナビ2025」で受け付ける。リクナビのエントリーシート「OpenES」の提出は10月21日午後11時59分まで、ウェブテストの受験締切は翌22日午後11時59分。いずれも英語力はTOEIC600点以上が望ましいとし、中国語、韓国語の能力があればなお良し、としている。業務内容は旅客取扱業務と付帯する業務、会社が定める業務で、発券、手荷物受付、搭乗案内、到着の各業務を担う。勤務地は北九州空港か羽田空港で、異動や転勤がある。【Aviation wire news】
4. 千葉工大、学生開発の超小型衛星「SAKURA」が初期ミッションを達成と発表
千葉工業大学(千葉工大)は9月25日、同大学が宇宙産業向けの人材育成を目指してスタートした高度技術者育成プログラムの一環として実施し、同大学の学生たちが開発した1Uサイズのキューブサット(超小型衛星)「SAKURA」が8月29日に国際宇宙ステーション(ISS)から軌道に投入され、無事初期ミッションを達成したことを発表した。同成果は、千葉工大 惑星探査研究センター(PERC)のチョウ・メンウ主席研究員(同・大学 工学部 機械電子創成工学科 教授兼任)」らの研究チームによるもの。世界の宇宙産業はここ数年で数倍に拡大しており、日本でも旧来の宇宙企業に留まらず、多くのベンチャー企業が宇宙ビジネスアイデアを提案し、企業活動を進めている。しかし、大きな課題もあるという。それは、新たなビジネスアイデアを具体化するために必須の存在である、高品質な人工衛星などの設計・製造・運用を支える高度な知識やスキルを有した技術者が不足しているという点。そうした中で千葉工大は、社会ニーズの解決のための宇宙を使ったソリューションを確実に実現できる衛星開発を行える技術者を育成するために、2021年4月より「高度技術者育成プログラム」を実施しているという。これまで、同プログラムでは超小型衛星の2号機「KASHIWA」が衛星軌道に投入されており(2024年4月にISSから放出)、同年6月には初期ミッションが達成された。今回軌道に投入された「SAKURA」は、高度技術者育成プログラムで開発された3号機となる超小型衛星で、一辺が10cmx10cmx10cmの1Uキューブサット。2022年7月に当時の学部2年生によって開発が始まり、製造に1年2か月をかけた後、2024年4月にJAXAに引き渡され、日本時間2024年8月5日に、スペースXのファルコン9ロケットNG-21号機で打ち上げられてISSに無事届けられた。そして、同月29日に放出されて地上と衛星間の通信が確立され、2024年9月18日、人工衛星局相当アマチュア局免許が交付されたという。衛星基本機能の宇宙空間での動作確認が行われ、「SAKURA」で計画されていた初期ミッションが達成されたとした。【マイナビニュース】
【千葉工大提供:1Uキューブサット「SAKURA」を製作した千葉工大の学生】