KIT航空宇宙ニュース2025WK09
海外のニュース
1. FAA、A320neoファミリー向けPW社GTF Advantage Engineアップグレードを承認
連邦航空局は、プラット・アンド・ホイットニーのGTF Advantage EngineをエアバスA320neoファミリーで使用することを承認した。Advantage Engineは、PW1100G ギアード・ターボファン・エンジンの最新型です。改良により、エンジンコアへの空気の流れが増加し、動作温度が低下する。その他の変更には、高圧タービン (HPT) ブレードのコーティングの改善、冷却穴のサイズと位置を最適化して酸化を減らす燃焼器の設計変更などがある。Advantage Engineは、同エンジンを搭載した A320neo ファミリーのジェット機に 4 ~ 8 パーセントの推力向上とペイロード航続距離の延長を実現するとともに、運用中の耐久性も向上させる。PW 社によると、Advantage Engineは既存の GTF ファミリーと「完全に混合および交換可能」で、メーカーは今年後半にAdvantage Engineの出荷を開始する予定です。【Flightglobal news】

【PW社提供:A320neo向けPW1100G Advantage Engine】
日本のニュース
1. 来年度ANA/JAL新卒を大量採用
ANAホールディングス傘下の全日本空輸は3月1日、2026年度入社の新卒採用を始めた。ANA本体で815人程度、グループ37社では約3000人採用する計画で、今後の成長につなげる。ANAとピーチ・アビエーションの2社は、客室乗務員の採用予定数を昨年の約2倍に拡大する。ANA本体は、グローバルスタッフ職(旧総合職)を140人、運航乗務職(自社養成パイロット訓練生)を65人、客室乗務職(CA)を600人、エキスパートスタッフ職(障がい者採用)を10人予定。グローバルスタッフ職は、2025年度から始めた文理を問わない採用を継続する。日本航空も3月1日、2026年度入社の業務企画職と運航乗務員訓練生(自社養成パイロット)、客室乗務員の新卒採用を開始した。パイロット訓練生はキャリア採用も実施する。JAL本体では720人程度、グループ全体では約1600人の採用を予定している。業務企画職は新卒者を90人程度、パイロット訓練生は新卒とキャリア合わせて50人程度、客室乗務員は580人程度採用を予定している。【Aviation wire news】
2. スカイマーク、26年度新卒採用310人 CA・総合職など5職種
スカイマークは2月28日、2026年度の新卒採用を始めると発表した。客室乗務職(CA)と総合職、地上旅客職(グランドスタッフ)、整備士、グランドハンドリング(地上支援業務)を担うランプハンドリング職の5職種が対象で、合計で約310人の採用を予定する。エントリーは3月1日午前0時から受け付ける。パイロット訓練生の詳細は後日発表する。【Aviation wire news】
3. JAL、デジタル体制一体化でDX加速 JITは社名変更、4月1日付
日本航空は2月26日、情報セキュリティを担うデジタルテクノロジー本部と、JALグループのIT中核会社・JALインフォテックの組織体制を4月1日付で一体化すると発表した。組織一体化により、ITシステムの安定稼働を堅持しつつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速を図る。組織一体化により、JITは4月1日付で社名を「JALデジタル(仮称)」への変更を予定する。新社長にはJALデジタルテクノロジー本部の鈴木啓介本部長が同日付で就任する見通し。所在地は変わらない。新組織では、デジタルテクノロジー本部とJITで連携し進めてきたデジタル体制を一本化。2026年4月をめどに段階的に移行させる。デジタルのノウハウと知見を持った人材をさらに集約することで、グループのDX化をさらに加速させていきたい考え。【Aviation wire news】
4. エンブラエル、ANAから初受注 E190-E2を最大20機
エンブラエルは2月25日、ANAホールディングスがE190-E2を最大20機発注したと発表した。確定発注は15機、オプションが5機で、2028年から引き渡しを予定している。ANAがエンブラエル機を発注するのは初めてで、E2シリーズを日本の航空会社が発注するのも初となる。E190-E2の座席数は未定。国内では日本航空傘下のジェイエアが運航するE190の座席数が2クラス95席(クラスJ 15席、普通席80席)となっており、今後モノクラスと複数クラスを比較し、採算性が見込めるレイアウトを採用する。航続距離は最大5278キロで、ANAHD傘下の全日本空輸が国内線で運航しているボーイング737-800型機(2クラス166席)の3900キロよりも長く、同じく国内線機材のエアバスA321neoの5130キロとほぼ同じとなる。現時点で投入路線は決まっていないが、航続距離が前世代機E190の4537キロより長いことから、これまで空白だった100席クラスの機材として導入するとともに、従来とは異なる路線の可能性も検討していく。ANAは、三菱重工業(7011)が開発を中止した90席クラスの国産リージョナルジェット「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を、ローンチカスタマーとして確定15機とオプション10機の最大25機を発注していたが、2023年2月7日の開発中止発表前から、機材計画は別立てとされており、今回も現在の需給バランスを基に発注数を決めている。E190-E2は、3機種で構成する次世代リージョナルジェット機「E2シリーズ」のうち、最初に商業運航を開始した機体で、2018年4月24日に就航。従来のエンブラエル170(E170)とE175、E190、E195で構成する「Eジェット」の後継機で、E175-E2とE190-E2、E195-E2の3機種でシリーズを構成する。新型エンジンや新設計の主翼、主脚の格納した際のドアなどで、燃費を向上させた。E190-E2のメーカー標準座席数は1クラス106席、2クラス97席で、最大114席を設定できる。E2のエンジンは、スペースジェットと同じく、低燃費と低騒音を特徴とする米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製GTFエンジンを採用。推力の違いにより、E175-E2がPW1700G、E190-E2とE195-E2がPW1900Gを搭載する。【Aviation wire news】

【エンブレアル提供:ANAのE190-E2イメージ】
5. ニコン、ロケット部品などの金属3D積層技術開発でJAXA宇宙戦略基金に採択
ニコンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募する令和6年度宇宙戦略基金事業において、技術開発テーマ「宇宙輸送機の革新的な軽量・高性能化及びコスト低減技術」の実施機関に採択されたと2月27日に発表。同社が戦略事業と位置づける、金属3D積層を含むデジタルマニュファクチャリングの技術を活用する。技術開発の主な目的は、ロケットなどの宇宙輸送機の大型構造体や部品における、熱可塑性複合材の適用拡大を通じた革新に加え、金属3D積層技術の活用拡大により、高品質化と造形プロセスの革新を図るための基盤技術の確立に取り組むこと。同社では、ロケットエンジンなど大型かつ精密さを重視する宇宙部品の金属3D積層による製造技術を確立し、これらを製造する装置開発の基盤技術も確立することを目標に掲げている。具体的には、大型金属3D積層造形システムを導入し、造形時のインプロセスモニタリング・シミュレーション技術開発・実験検証を通して装置の特性を把握することにより、 造形プロセスの高度化を追求。また、銅合金での造形について、造形時のインプロセスモニタリングや造形部品の分析を通してプロセスパラメータが造形品質に与える影響を把握し、粉末仕様・保管・造形パラメータ・再使用といった、銅合金のライフタイムプロセス確立をめざす。ニコンでは今回の技術開発テーマについて、高度な技術開発が必須であり、将来は幅広いアプリケーションにも適用可能な高い波及効果を与えるために、国内企業、大学からなる研究体制とし、各機関が得意とする技術をリード。「国内初の大型金属3D積層造形システム本体と同システムを活用し、宇宙用途に適用可能な精密部品の低コスト化、リードタイム短縮等の世界市場を勝ち抜く造形技術を開発・実証することをめざす」としている。宇宙戦略基金は、「輸送」、「衛星」、「探査」の3分野で、スタートアップをはじめとする民間企業や大学などが最大10年間、技術開発に取り組めるようにJAXAが支援する基金。【マイナビニュース】

【ニコン提供:報道陣に公開した3Dプリンターで製作したロケットエンジンのサンプル】