KIT航空宇宙ニュース2021WK52

空中停止(ホバリング)飛行に成功したArcher Aviation社のeVTOLデモ機
お知らせ

KIT航空宇宙ニュース2021WK52

2021年最後のKIT航空宇宙ニュースです。今年一年ご愛読頂き、ありがとうございました。来年は1月10日から投稿を再開いたします。

昨年に引き続き、今年も新型コロナウィルスの世界的感染拡大により、航空業界は大きなダメージを受けましたが、徐々に回復の兆しは見えてきています。来年はもっと良くなると期待したいと思います。それでは、皆さん、良いお年をお迎えください。

交通機械 小林

海外のニュース

1.米企業ロケット・ラボ、独創的な新型再使用ロケット「ニュートロン」を発表

米国の宇宙企業「ロケット・ラボ」は2021年12月2日、開発中の新型ロケット「ニュートロン(Neutron)」の最新情報を公開した。従来の構想に比べ、機体やフェアリング、エンジンに独自性ある技術を多く採用。打ち上げコストの低減を目指し、信頼性と再使用性をさらに追求したコンセプトとなった。そこには、ライバルとなるスペースXの再使用ロケット「ファルコン9」の“弱点”を研究して生み出された、数々の工夫が込められている。ニュートロンは、地球低軌道に約8tの打ち上げ能力をもつ中型ロケットで、小型衛星を数十機まとめての打ち上げや、惑星探査機、国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給ミッション、そして有人宇宙飛行などの打ち上げに使うことを目指している。低軌道に8tという打ち上げ能力は、エレクトロンと比べると約25倍も大きい。その一方で、現在世界で最も多く打ち上げられている米国スペースXの大型ロケット「ファルコン9」と比べると約半分の能力しかない。【マイナビニュース】

【Gooニュース提供:新型再使用ロケット「ニュートロン」の想像図】

2. EAGとノッティンガム大学が電気エンジン開発で提携

ゼロエミッション航空機の開発者であるElectric Aviation Group(EAG)は、ノッティンガム大学との合弁会社を設立して、様々な電動パワートレインを設計する予定で、 水素ハイブリッド電気推進システム(H2EPS)と呼ばれるこのシステムは、90席の水素ハイブリッド電気地域航空機であるEAG独自のH2ERAを含む、航空宇宙および非航空宇宙アプリケーション向けのさまざまな電気パワートレインソリューションを開発および商品化する予定です。これらはkWクラスからMWクラスの範囲をカバーし、超電導および非超電導設計になるが、H2EPSは当初、将来のハイブリッド、全電気および水素電気航空機用の2MWクラスの推進システムに焦点を合わせている。ノッティンガム大学はこれまでに最大4MWの航空機推進駆動システムを実証してきた。EAGは「商業的に実行可能な航空機プログラムとビジネスリーダーシップへのアクセスを提供し」、大学は「最先端の電気推進研究の専門知識、能力、経験」を提供すると述べている。ただし、H2EPSのタイムラインは明らかにされていない。【Flightglobal News】

【EAG提供:水素ハイブリッド電気90人乗り航空機「H2ERA」想像図】

3. Archer AviationがeVTOL機で最初のホバリング(空中停止)試験飛行を完了

Archer Aviationは、先週12月16日に行われたMaker航空機の最初の成功したホバー飛行の完了を発表した。Archerは、特殊耐空証明を受けるために電気垂直離着陸(eVTOL)航空機を開発製造している数少ない企業の1つ。デモンストレーター航空機は、ホバー飛行が行われる6か月前の2021年6月に発表され、時速150マイルで60マイルの航続距離を持つと予想されている。ホバー飛行中、デモンストレーター機は空中に上昇し、所定の位置にホバリングした後、無事に地上に着陸した。同社のプレスリリースによると、この成果は、「航空機を空中に移動させることを目的として機能するすべてのハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントの、同社初の完全かつ完全なシステムテストと検証の完了を示している」。メーカー最初のホバー飛行が成功した先週は1903年にノースカロライナ州キティホークで行われたライト兄弟の初飛行の記念日と重なる。【Aviation Today】

【Archer Aviation提供:空中停止しているeVTOLデモンストレーター機】

日本のニュース

1. ORC、ATR42導入 22年度に初受領

長崎空港を拠点とするオリエンタルエアブリッジは12月24日、離島路線の後継機として仏ATR製ターボプロップ(プロペラ)機のATR42-600型機を2022年度から2機受領し、2023年度中に定期便に就航させると発表した。現行のボンバルディア(現デ・ハビランド・カナダ)DHC-8-Q200型機は退役させ、2025年度から2機のATR機での運航を目指す。ATR42-600の座席数は1クラス48席で、Q200の同39席から9席増える。就航から20年が経過していることから、機材更新を決めた。初号機を2022年度中に受領し、定期便では長崎-壱岐線、五島福江線、津島線、福岡-福江線などの離島路線に投入する見通し。ORCでは現在、Q200に加えて2017年10月29日開始の冬ダイヤからは、全日本空輸)を傘下に持つANAホールディングスからDHC-8-Q400(1クラス74席)をリース導入している。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:ORCのQ200型機】

2. エアバスの大型輸送機「ベルーガ」関空に初飛来 22年ぶり”来日”

エアバスの大型輸送機A300-600ST「ベルーガST」の3号機が12月24日午後、関西空港へ初飛来した。仏マルセイユからエアバス・ヘリコプターズの大型双発ヘリ「H225 スーパーピューマ」を輸送しているとみられ、近く同社の格納庫がある神戸空港へ向かう見通し。ベルーガは通常エアバス機の主翼などを欧州内で運んでおり、日本に同型機が飛来するのは1999年以来22年ぶり。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:関空に飛来したエアバス社の大型貨物機ベルーガ】

3. ロールス・ロイスとIHI、次期戦闘機エンジン実証機を共同開発

英ロールス・ロイスは現地時間12月22日、次期戦闘機用エンジンの実証機の開発・提供をIHIと共同で実施すると発表した。次期戦闘機は日本では「F-X」、英国では「テンペスト」の開発に向けた動きが進んでおり、両社は2022年1月から実証機の共同開発を始める見通し。英国側は計画、デジタル設計、製造開発に3000万ポンド(約45億円)の初期投資を行い、さらに2億ポンド(約303億円)の英国資金を投入して実物大の実証機を開発する。日本政府と産業界が近年進めている技術開発に、英国がテンペストで開発する技術を合わせることで、世界有数の次世代エンジン開発を目指す。F-Xは日米英三カ国の国際協力により開発を進め、F-Xとテンペストはともに2035年ごろの部隊配備を目指す。ロールス・ロイスは、次期戦闘機用エンジンにより将来的に日英両国で数百人規模の雇用創出につながる可能性があるとしている。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:日本の次期戦闘機F-X】

4. 年末年始の国内線予約、コロナ前の7-8割まで回復 国際線は1割

全日本空輸や日本航空など航空各社の年末年始の予約状況は、新型コロナの変異ウイルス「オミクロン株」の影響で、国際線は各社とも低調な状態が続いている。一方、ANAとJAL大手2社の国内線は、コロナ前の2019年同期と比べて提供座席数が8割から9割強まで回復し、予約数もANAが7割、JALが8割まで戻している。対象期間は12月25日から2022年1月4日までの11日間。大手2社の予約状況のうち、ANAの予約数は国際線が前年同期2.0倍(19年同期比90.0%減)の3万3859人で、国内線が12.3%増(同29.0%減)の108万1252人。提供座席数は国際線が9.9%増(同78.4%減)の9万2480席で、国内線は14.8%減(同19.2%減)の166万4465席となった。予約率は国際線が16.7ポイント上昇(同42.9ポイント低下)し36.6%、国内線は15.7ポイント上昇(同8.9ポイント低下)し65.0%となっている。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供】