KIT航空宇宙ニュース2022WK08

エアバス社がA380型機を改造し、水素燃料燃焼エンジンの飛行試験を計画
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1. エアバスとCFM、水素燃焼技術の実証実験 A380試験機に改造エンジン、2035年実現へ

エアバスとCFMインターナショナルは、エンジンの水素燃焼技術の実証に向けたパートナーシップを締結したと2月22日に発表した。実証実験には総2階建ての超大型機A380型機の試験機を使用し、2035年に予定するゼロエミッション(排出ゼロ)機の就航へ準備を進める。今回の実証実験では、水素を燃料とする直接燃焼エンジンの地上試験と飛行試験を実施する。CFMに出資する米GEのビジネスジェット用エンジン「GE Passport」を、A380試験機の後部胴体に装備。試験するエンジンの排気を、A380のエンジン排気とは区別して監視する。GE Passportは、燃焼器と燃料システム、制御システムを水素燃料用に改造する。エアバスは、2035年までのゼロエミッション飛行の実現に向けた取り組み「ZEROe」プログラムを進めている。従来のジェット機を置き換えるターボファンと、ターボプロップ(プロペラ)、全翼のブレンデッド・ウィング・ボディの3種類のコンセプトを発表し、航空業界全体の脱炭素化への取り組みをリードする狙いがある。【Flighglobal News】

【Airbus社提供:Passportエンジンを胴体後部左側上部に装着したA380実験用改造機想像図】

2.エンブラエル、E175-E2の開発3年間中断 27年以降就航

エンブラエルは、次世代リージョナルジェット機「E2」シリーズのE175-E2について、開発を3年間中断する決定を下した。「スコープ・クローズ」と呼ばれるリージョナル機に関する米国の労使協定に関する協議の進捗や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の民間航空機市場への影響などによるもの。新たな就航時期は2027年から2028年の間を想定している。E2シリーズは、現行のエンブラエル170(E170)とE175、E190、E195で構成する「Eジェット」の後継機。E175-E2とE190-E2、E195-E2の3機種で構成し、機体サイズはE175-E2が最も小さい。エンジンは、三菱航空機が開発を凍結している三菱スペースジェット(Mitsubishi SpaceJet、旧MRJ)と同様、低燃費と低騒音を特徴とする米プラット・アンド・ホイットニー製GTFエンジンを採用。推力の違いにより、E175-E2がPW1700G、E190-E2とE195-E2がPW1900Gを搭載する。E175-E2は2019年12月12日に初飛行。メーカー標準の座席数は1クラスの場合は最大90席、3クラスは80席。スコープ・クローズは、76席までの航空機の最大離陸重量(MTOW)制限に関する米国のパイロット組合との労使協定で、現状ではMTOWが9万8120ポンド(4万4600キログラム)のE175-E2はリージョナル機のパイロットが運航できず、機体を再設計するか協定の緩和が必要になる。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:開発を中断したエンブラエル社E175-E2型機】

3.エアバス、3期ぶり最終黒字 単通路機好調、21年通期

エアバスの2021年12月期通期連結決算は、純損益が42億1300万ユーロ(約5460億円)の黒字だった。前年は11億3300万ユーロの赤字で、2019年12月期以来3期ぶりに最終黒字となった。単通路機を中心とした民間機の引き渡しが、前年を上回る611機で好調だったことなどが奏功した。2022年12月期の引き渡しは720機程度を見込んでおり、調整後EBIT(財務・法人所得税前利益)は55億ユーロを想定している。売上高は4%増の521億4900万ユーロ、調整後EBITは48億6500万ユーロ(前年は17億600万ユーロ)で、1株あたりの配当は1.5ユーロを提案する。2021年の民間機引き渡し数は88社へ611機(前年比45機増)、純(ネット)受注数は507機(同239機増)だった。【Aviation Wire News】

4.スペースXのインターネット衛星「スターリンク」約40機、磁気嵐の影響で喪失

米宇宙企業スペースXは2022年2月4日に打ち上げたインターネット衛星「スターリンク」49機のうち、約40機を喪失することになったと発表した。打ち上げ直後で低い高度の軌道を周回していたところ、磁気嵐の影響で地球が暖められ膨張。衛星が周回していた高度の大気密度が上昇し、大気との抵抗によって大気圏に再突入してしまうためだという。すでに一部の衛星は再突入しており、今後数日のうちにさらに多くの衛星が再突入するとしている。衛星は再突入時に燃え尽きるように設計されているため、軌道上に破片は発生せず、衛星の部品が地上に落下することもないとしている。喪失したスターリンク衛星は、近地点(軌道の中で最も地球に近づく点)高度210kmの軌道に投入。その後、搭載機器の点検などを行う初期チェックアウトが行われていた。【マイナビニュース】

【マイナビニュース提供:磁気嵐で喪失したインターネット通信衛星「スターリンク」】

5.ロシアのウクライナ侵攻による国際航空産業に及ぼす影響

米国デルタ航空がロシアの航空会社エアロフロートとのコードシェア協定を破棄したほか、英国の航空会社ブリティッシュエアウェイズはじめ欧米の航空会社がロシアへの飛行を停止。コロナ・ウィルス感染拡大で大きく落ち込んでいる国際線需要の回復がこれでまた遅れる可能性がある。また、ロシアは欧米の航空機メーカーへのチタン素材の供給を停止する可能性があり、航空機製造用チタニウム不足が懸念される。【Flightglobal News】

6.米国プラット・アンド・ホイットニー社が次世代航空機用水素燃焼エンジンを開発 プラット・アンド・ホイットニー は、米国エネルギー省(DoE)によって、Advanced Research Projects Agency-Energy(ARPA-E)OPEN 2021プログラムの一環として、商用航空機向けの新しい高効率水素燃料推進技術を開発するために380万ドルを供与された。水素蒸気噴射式インタークーリング・タービンエンジン(HySIITE)プロジェクトでは、液体水素(LH 2)燃焼と水蒸気回収によって、飛行中のCO 2排出量をゼロにし、窒素酸化物(NO x)排出量を大幅に削減する。次世代の単通路航空機では、NOx排出量を最大80%削減し、燃料消費量を最大35%削減する。HySIITEエンジンは、蒸気噴射を組み込んだ熱力学的エンジンサイクルで水素を燃焼させ、NOx排出量を削減する。HySIITE用に計画されたセミクローズド・システム技術は、「ドロップイン」の持続可能な航空燃料所謂バイオ燃料などのSAFを使用する場合や、燃料電池よりも高い熱効率を達成し、総運用コストを削減可能とする。【Flightglobal News】

【P&W社提供:P&W社所有エンジン試験装置】

日本のニュース

1. ホンダジェット、納入累計200機超え

本田技研工業の米国子会社ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)は2月23日、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の2021年通期(1-12月期)の引き渡しが37機(前年比6機増)となり、2017年から5年連続で小型ジェット機カテゴリーの世界最多納入になったと発表した。また12月には200機目を引き渡し、納入開始から7年での到達となった。ホンダジェットは2015年12月23日に量産初号機が引き渡され、2020年末までに209機を納入済み。現在は日本と北米、欧州、中南米、東南アジア、中国、中東、インド、ロシアで販売され、型式証明を14カ国目となるタイでも取得した。2018年には、改良型「HondaJet Elite(ホンダジェット エリート)」を発表。2021年5月に、最大離陸重量を200ポンド(約91kg)増やした最新型の「HondaJet Elite S(ホンダジェット・エリートS)」を発表した。また、従来機の「HondaJet」よりも1つ上の「ライトジェット機」クラスに相当するコンセプト機「HondaJet 2600 Concept」を今年のシンガポールエアショーで参考展示。同クラスとしては初めて米大陸の横断が可能となるほか、今年1月にはホンダジェットの総飛行時間が10万時間を超えた。 GAMA(全米航空機製造者協会)によると、2021年に引き渡されたビジネスジェットは710機。2020年の644機と比べて10.2%増加した。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:Honda Jet機】