KIT航空宇宙ニュース2023WK29

家畜糞尿から製造した液化バイオメタンをロケット燃料に利用(概念図)
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KIT航空宇宙ニュース2023WK29

海外のニュース

1.23年の世界最長はどの路線? トップは1.5万キロ18時間超=英OAG調査

世界最長路線は1万5000キロ超で、飛行時間は18時間超え──。世界の航空関連情報を提供する英国のOAGは現地時間7月19日、2023年版の最長路線トップ10を発表した。1位はシンガポール航空が運航するシンガポール-ニューヨーク(JFK)線で、2021年から3年連続で首位となった。ランキングはOAGが持つ7月時点での時刻表データを使用し、独自で調査。地球上の2地点間を最短距離で結ぶ「大圏航路」の距離(GCD)で算出した。1位はシンガポール航空が運航するニューヨーク発シンガポール行きで、1万5332キロ。飛行時間は18時間40分で、2021年から首位をキープしている。2位はシンガポール航空が運航するニューアーク発シンガポール行きで、1万5329キロだった。機材はいずれも、エアバスA350 XWBの超長距離型となるA350-900ULR(Ultra-Long Range)を投入している。2025年にはさらなる長距離路線の就航も計画されており、同年後半にはカンタス航空がシドニー-ニューヨーク線を開設する見通し。機材は新たに発注したA350-1000で、長時間のフライトになることから、ストレッチや運動、軽食をとることができる空間として、「ウェルビーイングゾーン」をプレエコとエコノミーの間に設けるという。OAGは長距離路線について「遅れている分野のひとつだった」とした上で、「世界の航空市場は新型コロナからの回復を続け、長距離路線も回復傾向にある。今後はトップ10に動きがあるとみて間違いない」としている。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:長距離路線に投入されるシンガポール航空のA350-900ULR型機】

2.FAA、リライアブル・ロボティクス社の自律飛行システム認証計画を承認

カリフォルニアの新興企業リライアブル・ロボティクス社が、タキシング、離陸、着陸を通じて常時オンの自動操縦として機能する自律飛行システムの認証と商業化に取り組んでいる。 リライアブル社のロバート・ローズ最高経営責任者(CEO)は7月19日のインタビューで、同社の開発中のシステムはGeneral Aviationの安全性を高めるという連邦航空局の目標に合致していると語った。リライアブル社は7月20日、FAAがこのシステムを認証する計画を承認したと発表した。この新興企業は約4年前に自動運転技術の認証を申請し、それ以来毎週規制当局と会合を持って無数の詳細を詰めてきた。同社は、そのシステムが軽航空機事故の最も一般的な原因である制御の喪失や地形への制御飛行を防ぐのに役立つと述べている。リライアブル社は、自律飛行に取り組む数少ない新興企業の1 つで他には、カリフォルニアの同業会社 Xwing やニュージーランド、米国に本拠を置く Merlin Labs などがあり、どちらも既存の航空機に後付けできるシステムを開発している。そして、ボーイングの支援を受けて電動エアタクシー開発会社のウィスクは、2020年代末までにパイロットなしの旅客運航を開始する予定だ。リライアブル社はNASAと協力して検知・回避センサーの検証を行っており、5月にはカリフォルニア州トラビス空軍基地での演習中に自動運転タクシー、セスナ・グランドキャラバンの離着陸に成功した。リライアブルは今年初め、ボーイングKC-135やロッキードC-130ハーキュリーズなどの大型軍用機に自社技術を適用する方法を検討していることを明らかにした。 このシステムのハードウェアには3台のフライト コンピューターと、すべての飛行制御面にわたる二重冗長作動が含まれているとローズ氏は言う。ソフトウェアは飛行全体を通じて航空機を管理する。ただし、リライアブル社のシステムには、人間が飛行を監視し、地上からコマンドを送信し、航空交通管制やその地域の他の航空機と通信する機能も備えている。【Flightglobal News】

【リライアブル・ロボティックス社提供:自動化技術を搭載したセスナ208B型機】

3.  ZeroAviaがドルニエ228の初期飛行試験キャンペーンを成功裡に完了

ZeroAviaは、英国コッツウォルド空港での初期プロトタイZA600飛行試験キャンペーンの完了を発表した。最初のシリーズの10回目の飛行は先週完了し、システムを使用した将来の航続距離の予測を確立するための巡航試験が行われ、試験とデモンストレーションの次の段階として最初の大陸間飛行の準備が整った。 ZeroAvia は、1月に画期的なシステムの世界初飛行を行って以来、過去 6 か月にわたり、さまざまな性能領域を順次テストしてきた。このキャンペーンでは、航空機が高度5,000フィートで飛行し、23分間の耐久テストを実施し、氷点下からほぼ30度までの広い温度範囲で動作し、CAAが発行した飛行許可に基づいて最大許容速度に達することが確認された。重要なのは、テストのすべての段階を通じて、新しいゼロエミッションの中核コンポーネントである燃料電池発電と電気推進システムが期待以上に機能したことです。水素電気推進装置は、反対側の翼にある従来の化石燃料エンジンの出力に匹敵し、パイロットは特定のテストで実験用のクリーン推進システムからのみ生成される推力で飛行することができた。ZeroAviaのDornier 228飛行試験プログラムは、HyFlyer IIプロジェクトの一部であり、このプロジェクトは、Innovate UKおよび商務貿易省と協力し、航空宇宙技術研究所を通じて英国政府から資金提供を受けている。 水素電気推進装置は、燃料電池で水素を使用して電気を生成し、その電気を使って電気モーターに電力を供給し、航空機のプロペラを回転させる。唯一の排出物は低温の水であり、研究によると気候への影響は合計で90%以上削減されることが判明している。【Flightglobal News】

【Zero Avia社提供:左翼に水素燃料電池電気推進装置ZA600を取り付けたDornier228型機】

4.  Verical Aerospace社のeVTOL機VX4プロトタイプが初飛行を完了

英国の新興企業バーティカル・エアロスペース社のVX4電動垂直離着陸(eVTOL)航空機が今週、初のフリーフライトを完了した。無人飛行試験は同社の開発センターがある英国のコッツウォルド空港で実施された。これは、VX4が地上の係留装置から解放され、屋外で飛行する初めてのことだった。これに先立ち、同機は2022年9月に離陸したが、安全上の理由から床と格納庫内のケーブルに係留されていた。メーカーによると、バッテリーのエネルギーのみで駆動されるeVTOL機は、最初の完全飛行で40ノット(時速75キロ)に達したという。同社は、今後数カ月以内に、パイロットを航空機に乗せて行う最初のテストを含む、VX4を使ったさらなる飛行テストを計画していると述べている。これまでに実施されたeVTOLによるテストは遠隔操作で行われている。VX4 は可動ナセルに取り付けられた8つの電気モーターで駆動され、パイロット1名と乗客4名を乗せられるように設計されている。同社によると、この都市型エア・モビリティは、巡航速度240km/h(最大320km/h)で最大160kmの航続距離を実現するという。世界中で進行中のさまざまな「空飛ぶタクシー」プロジェクトの中で、VX4は市場で最も期待されているモデルの1つです。バーティカル・エアロスペース社は、航空会社、航空会社、レンタル会社、ツアーグループからこの機体の予約注文を1,400件以上受けている。日本も、日本航空が100機、丸紅が200機の予約注文をしている。【Air Data News】

【Vertical Aerospace社提供:Vertical Aerpspace 社のeVTOL機「VX4」】

5.  FAA、高度な航空モビリティを導入するための手順を概説する実施計画を発行

FAA は、FAAと他の機関が近い将来に安全に高度な航空モビリティ(エア・タクシー)運用を可能にするために必要な手順を詳細に記載した実施計画を発表した。「Innovate28」計画には、2028年までに1つ以上の拠点で大規模な運用を実現するためのさまざまな要素とそれらの順序が含まれている。 「この計画は、すべての要素がどのように連携し、安全性を確保しながら業界を拡大できるかを示しています」とFAA副長官ケイティ・トムソンは述べた。この計画は、既存の手順とインフラストラクチャを最大限に活用することで、サービス開始を日常的かつ予測可能にするための基盤として機能する。これは、政府機関とパートナーが航空機とパイロットの認証、空域へのアクセスの管理、パイロットの訓練の確保、インフラの開発、セキュリティの維持、コミュニティの参加をどのように行うかについて取り上げている。 この計画には、計画ガイドも含まれており、主要な統合目標と手順が示されている。【FAA】

【NASA提供:近未来のアーバン・エア・モビリティ想像図】

6.  Ecojet: 英国のエネルギープロバイダーが再生可能エネルギーを利用した航空会社の就航を検討

英国の新しい水素電気航空会社Ecojetが、早ければ来年にも初飛行を目指している。Ecojetは、2024年初めに国内線から運航を開始し、その後ヨーロッパやその他の国にも拡大する予定。同社は、再生可能エネルギー企業エコトリシティの創設者デール・ビンス氏が主導しており、排出ガスのない商用航空旅行で「ジェットエンジンの発明以来、航空業界における最大の革命」を起こそうとしている。この将来の航空会社は、19人乗りのターボプロップ機(DHC-6ツインオッター機)でスタートし、約18か月後には 70人乗りの航空機(DHC-8)を追加し、最終的には水素電気パワートレインで稼働する予定。Ecojetは英国民間航空局(CAA)に航空運航者ライセンス(AOC)を申請中で、選ばれた空港での発着枠の確保を目指している。同社は、CAAの承認を待って、2025年に水素電気パワートレインを搭載した機材を改修する前に、できるだけ早く運航を開始するために、まずジェット燃料を動力とする従来の航空機で運航を開始する予定。【Flightglobal News】

【Flightglobal提供:Ecojet社のDHC-6ツインオッター機】

日本のニュース

1. JAL、ホンダジェットのチャーター販売 ペット同伴も

日本航空と丸紅が出資するJALビジネスアビエーション(JALBA)は7月21日、小型ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」の一般向けチャーターの販売を同日から始めたと発表した。JALBAがチャーターの販売窓口となり、運航はJapan Biz Aviation(JBZ、東京・大田区)が担う。チャーター便は空港の運用時間内であれば、航空会社の定期便が設定されていない時間帯でも運航できることから、国内を移動時に柔軟なスケジュールを設定できる。また、定期便では客室に同乗させることが難しいペットとの旅行にも対応できる。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:JABAがチャーターで使用するホンダジェット機】

2.羽田空港、異業種連携拠点「terminal.0 HANEDA」24年開設 参加企業募集

羽田空港のターミナルを運営する日本空港ビルデングは、さまざまな羽田空港の課題を解決する新たな取り組みとして、オープンイノベーションによる研究開発拠点「terminal.0 HANEDA(ターミナル・ゼロ・ハネダ)」を、2024年1月に開設する。異業種連携による課題解決を進めるもので、参画企業や団体を8月18日まで募集している。terminal.0 HANEDAは、第3ターミナル(旧称国際線ターミナル)近くにある複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ、HICity)」に開設。羽田の既存機能向上として、保安検査場のストレス軽減、先端ロボットの活用などに取り組むとともに、空飛ぶクルマの利活用や、日本の宇宙産業などがより進展し、移動の概念が変化した時代のターミナル機能の可能性などの研究開発を同拠点で進める。今回の取り組みでは、「人のこころを動かすために、空港が出来ることのすべて。」をテーマに掲げた。応募方法は、応募フォームに必定事項を記入後、会社概要のPDFと企画書(様式不問)を電子メールで事務局に提出する。また、取り組みの趣旨などをまとめた動画を公式YouTubeチャンネルで公開している。参画企業・団体の決定は9月中旬以降を予定しており、個別に連絡するという。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:異業種連携拠点「terminal.0 HANEDA」のイメージ】

3.成田空港、高校教員向け視察会 業界の人材育成・確保急務

成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は8月3日に、高等学校の教員を対象とした「空港視察会」を開催する。空港周辺の市町村や企業、経済団体などで構成する成田空港活用協議会との共催で、航空・空港業界で深刻化する人手不足の解決を目指す。教員を対象とした視察会は初めて。当日は千葉・茨城両県の高校教員26人が参加し、空港の概要説明のほか、制限エリアや現場作業をバスで見学する。また、航空・空港関連企業の座談会の場も設ける。航空・空港関連業種は人手不足が課題となっている。成田空港もさらなる機能強化に伴い、これらの労働需要が高まっていることから、課題の深刻化が想定される。今回の空港視察会は人材の育成や確保を目的とし、教員に制限エリアや現場作業を公開する。航空・空港業界の職種に関心を持つことや、高校生の航空・空港業界への就業意識の向上を狙う。【Aviation wire news】

4.6月の訪日客、3年5カ月ぶり200万人超え コロナ前7割回復

日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値によると、2023年6月の訪日客数は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前となる2019年同月比28.0%減の207万3300人で、コロナ前の7割以上回復し、2020年1月以来3年5カ月ぶりに200万人を上回った。出国した日本人は53.8%減の70万3300人で、コロナ前の半数近くまで回復しているものの、訪日客との回復率に依然として差がみられる。JNTOが重点市場としているのは23カ国・地域で、4月分から北欧地域が加わった。月間の訪日客数は半数以上の市場で例年割れが続いているが、コロナ前の7-9割まで戻した市場が目立ち、回復が進んでいる。23市場のうち2019年同月を上回ったのは8カ国・地域で、シンガポールとフィリピン、ベトナム、豪州、米国、カナダ、メキシコ、中東で回復が進んだ。【Aviation wire news】

5.ANAグループ、オンライン説明会 7/29と30開催

全日本空輸(ANA/NH)を中核とするANAグループは、オンライン企業説明会「ANA GROUP SUMMER OPEN COMPANY」を7月29日と30日に開催する。応募は27日午後3時まで。対象は高校、航空専門学校、高専、専門学校、短大、大学、大学院の在籍者。29日は午前10時から午後5時20分まで、30日は午前10時から午後4時20分まで開催する。申し込みはANAグループの採用ページから。参加予定社は、29日がANA、ANA新千歳空港、ANAエアポートサービス、ANA福岡空港、ANAエアサービス松山、ANA沖縄空港、e.TEAM ANA(ANAグループ整備部門)、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)の整備部門、ANA成田エアポートサービス(車両整備部門)、ANA Cargo、OCS、ANAビジネスソリューション、ANAウィングフェローズ・ヴイ・王子、ANAあきんど、ANA X(ANAエックス)。30日は、ANA、ANAウイングス(AKX/EH)、ANA新千歳空港、ANA成田エアポートサービス、ANA中部空港、ANA関西空港、ANAエアサービス松山、ANAスカイビルサービス、ANAケータリングサービス、全日空商事、ANAフーズ、ANAシステムズ、ANAテレマート。【Aviation wire news】

6.IST、「ZERO」の燃料に家畜糞尿から製造した液化バイオメタンを採用

インターステラテクノロジズ(IST)とエア・ウォーター北海道は7月21日、北海道十勝地方の未利用バイオマスである家畜糞尿から製造した「液化バイオメタン(LBM)」を、インターステラテクノロジズの超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の燃料として使用することを決定した。宇宙利用が拡大する近年においては、SpaceXのスターシップをはじめとするさまざまなロケット会社の間で、価格・性能・扱いやすさ・入手性・環境性などが総合的に優れた燃料として、液化メタンの採用が増えている。ISTもそのうちの1社で、不純物を含まない高純度メタンを必要とするロケット燃料としての利用に向け、その調達方法を検討してきたとする。産業ガスを提供するエア・ウォーターグループは、北海道十勝エリアを中心に、家畜の糞尿から発生するバイオガスをLNG(液化天然ガス)の代替燃料となるLBMに加工し、域内で消費するという地域循環型のサプライチェーン構築に取り組んできた。その中で2022年10月には、帯広市にLBMの製造工場を稼働させ、食品工場・LNGトラック・船舶などへの燃料供給に向けた実証を進めているとする。またエア・ウォーター北海道は、2021年5月よりISTの企業向けパートナーシッププログラム「みんなのロケットパートナーズ」に加入しており、各種試験で使用するLNGの供給やタンクの製造を始め、技術・物資面での支援を行ってきたという。【マイナビニュース】

【IST提供:液化メタン(LBM)の利用概念図】