KIT航空宇宙ニュース2023WK33

1985年8月12日御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機墜落事故の遺族による慰霊登山が38年目を迎えた。写真は御巣鷹山にある「昇魂之碑」。
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1. MD-90で“極薄主翼”実証機X-66A NASA・ボーイング、次世代機研究へ近く改造

ボーイングは現地時間8月17日、NASA(米国航空宇宙局)が進める持続可能な実証機プログラム「サステナブル・フライト・デモンストレーター」(SFD、Sustainable Flight Demonstrator)について、実証機「X-66A」の改造母機となる旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-90型機のフェリーフライトを実施したと発表した。SFDプロジェクトは次世代の単通路小型機開発につなげるもので、2028年に地上試験と飛行試験を計画し、2030年代の実用化を目指す。新たに開発するX-66Aは、極薄で長い主翼を胴体から斜めに伸びる支柱で支える「遷音速トラス支持翼(TTBW、Transonic Truss-Braced Wing)」を採用。この設計により空気抵抗が従来機よりも少なくなる。翼幅は145フィート(約44.2メートル)。ベースとなるMD-90は、米カリフォルニア州ビクタービルから同州パームデールへ15日にフェリー後、ボーイングの施設で新たな主翼となるTTBWを胴体に取り付ける。作業は間もなく始まる見通し。ボーイングによると、TTBWを採用した単通路機は推進システムや進歩したシステム構築などと組み合わせることで、現在の国内線航空機と比較し、燃料消費とCO2(二酸化炭素)排出量を最大30%抑える効果があるという。X-66Aで検証を進めるSFDプロジェクトは、米国の航空会社5社が支援。アラスカ航空(ASA/AS)とアメリカン航空(AAL/AA)、デルタ航空、サウスウエスト航空、ユナイテッド航空が参画し、運航効率のほか、空港での適合性やメンテナンス、ハンドリング特性などの意見を提供する。【Aviation wire news】

【NASA提供:TTBWの実証機「X-66A」の改造母機となるMD-90】

2.  GEエアロスペース、ハイブリッド電気航空機の外観を初公開

GE エアロスペースは最近、NASA とボーイングに加わり、電動パワートレイン飛行デモンストレーション (EPFD) プロジェクト用のハイブリッド電気航空機テストベッドの塗装スキームを発表した。今後数年のうちに、この飛行機は民間航空の将来に向けて開発中の新しいハイブリッド電気推進システムをテストする。ウィスコンシン州オシュコシュで7月に開催されたEAA Air Venture航空ショーで、GEエアロスペースは、民間航空におけるハイブリッド電気飛行の実現可能性を証明する画期的な取り組みであるNASAの電動パワートレイン飛行実証(EPFD)プロジェクトの航空機テストベッドの新しいカラーリングデザインを初披露した。ハイブリッド電気試験飛行では、GEエアロスペースはボーイングおよびその子会社であるオーロラ・フライト・サイエンスと提携し、GEのCT7エンジンを搭載した改良型サーブ340B航空機を使用している。GE エアロスペースは、地上および飛行試験用に統合されたメガワット級ハイブリッド電気推進システムを開発している。写真の航空機は、オーロラ・フライト・サイエンスの支援を受けて改造され、従来のCT7ガスタービンと並行してハイブリッド電気システムを設置し、電気モーター/発電機、電力変換、エネルギー管理、その他の技術を実証する。オシュコシュでの同機の登場は、ハイブリッド電気飛行の開発に対するGEエアロスペースの長年にわたる取り組みを浮き彫りにしている。同社は10年前の2013年に、航空機用の新しい発電システムを開発するためにデイトン大学と電力統合システム センター(EPIS Center) を開設し、最初の重要な一歩を踏み出した。それ以来、重要なコンポーネントであるモーター駆動のプロペラのテストと動力伝達のシミュレーションを通じて大きな進歩を遂げてきた。実際、GEエアロスペースは、新しいテストセルと追加の機器を追加するために、EPIS Center に 2,000万ドルの投資を発表した。オハイオ州サンダスキー近郊の NASA電気航空機テストベッド施設であるNEATで行われたテストは、高度45,000フィートをシミュレートした。NEATは現在、電動パワートレインを設置できる十分な規模を備え、高電力および高地条件をシミュレートできる唯一の施設です。このユニークな施設のおかげで、GEエアロスペースと NASAは電力伝送の実現可能性を正確にテストすることができた。【Flightglobal News】

【GEエアロスペース提供:NASAの電動パワートレイン飛行デモンストレーション (EPFD) プロジェクト用のハイブリッド電気航空機テストベッド】

日本のニュース

1. スターフライヤー、現役CAら講師のエアライン講座開催(9/30のみ)

スターフライヤーは8月17日、現役の客室乗務員(CA)らがレクチャーするエアライン講座を開講すると発表した。航空業界に興味のある人を対象としたエアラインスクールで、意見交換などを通じ業界理解を深めてもらう。開催日は9月30日のみで午前10時から午後6時30分まで。北九州空港にある同社の訓練施設で開催する。CAと地上係員が講師となり、航空業界やキャリアビジョンのほか、面接のマナー、各職種の業務内容などをレクチャーする。対象は航空業界に興味のある専門学校・大学・大学院・社会人で、30人募集する。申し込みはスターフライヤーHP参照。【Aviation wire news】

2. 国交省、グラハン・保安検査の契約適正化提言

国土交通省航空局(JCAB)は、人手不足が課題となっているグランドハンドリング(地上支援)や保安検査などの空港業務について、各空港関係者が持続的発展に向けて実施した取り組みを事例集としてまとめた。国交省の有識者会議「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」(座長:加藤一誠・慶應義塾大学教授)の中間とりまとめの一環で、時間軸や空港の規模なども意識し、契約の適正化なども含めた対策を講じるべきと提言している。現状改善に向けた取り組みの視点として「働き方」「需要変動への対応」「多様な人材受入」「イノベーション」を挙げた。さらに、これら4点を踏まえた「空港ごとの対応」と「官民の関係者の連携」を合わせた6つの視点から、空港業務の持続的発展につなげるビジョンとして整理した。各空港での取り組み事例として、羽田空港では外国人の登用促進、関西空港ではGSE(航空機地上支援車両)に関する先進技術の導入といった事例が紹介された。今後の具体的な取り組みを、今年秋ごろまでの「短期」、今年度末までの「中期」、2024年度以降の「長期」に時間軸で分類。短期では、地方空港を中心に直近の課題となっている、国際線再開の本格化に向けて、待遇改善などの取り組みを実施する。中期では、年度内にコロナ前の水準に近い体制を実現するため、各社や新たに設立される業界団体を中心に、人材確保や育成、業務効率化を進める。長期と位置づける2024年度以降は、コロナ前の需要に対応できる体制を整えるだけでなく、需要変動リスクへの対応として航空便が就航するメリットを享受する自治体などとのリスク分担の実現なども、業界の生産性向上や技術革新と並行して進めていく。また、都市部と地方の空港では、航空需要の回復速度や生産年齢人口の減少幅などに違いがあることを考慮する必要があると指摘。共通する課題としては、賃上げを含む処遇改善に不可欠なグラハン会社などの受託料の引き上げ、人材確保でマイナスに働く受託契約の内容適正化、長期間働けるキャリアパスの整備、人件費圧縮競争を防止する観点での多重委託構造や雇用慣行・契約慣行の見直しなどに取り組むべきだとした。【Aviation wire news】

3.  日航機事故から38年、76家族272人が御巣鷹山登る 追悼式は4年ぶり遺族参列

乗客乗員520人が亡くなった日本航空123便墜落事故から、8月12日で38年が経った。午後6時開式の追悼慰霊式は、コロナ前の2019年以来4年ぶりに遺族が参列して開かれる。JALによると12日午後4時の時点で、昨年よりも27家族122人多い76家族272人の遺族が御巣鷹山を訪れた。新型コロナの「5類」移行後初の夏休みとあって、2020年以降では最多、2019年同時刻の80家族276人に近い登山者数になった。これまでの最多は事故後30年の2015年で、106家族406人だった。群馬県多野郡上野村の追悼施設「慰霊の園」で開かれる追悼慰霊式は、2019年は270人が出席。このうち遺族関係者は172人だった。4年ぶりに遺族が参列する今年は76人の遺族を含む140人が出席した。羽田発伊丹行きJL123便(ボーイング747SR-100型機、登録記号JA8119)が墜落した午後6時56分に、参列者が黙祷(もくとう)をささげる。JL123便には、乗客509人と乗員15人の524人が乗っていた。1985年の事故発生から38年が経過し、当時から働く社員は今年3月末時点で全社員の1.2%にあたる154人まで減少しており、事故の記憶を風化させず、教訓を伝えていく重要性が高まっている。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:御巣鷹山の「昇魂之碑」】