KIT航空宇宙ニュース2023WK44
海外のニュース
1. Dufour Aerospaceのティルトウィング機「Aero3」で救命救急と貨物輸送ミッションがターゲット
ハイブリッド電気航空機開発会社のDufour Aerospace社は、同社が提案する垂直離着陸(VTOL)航空機を既存のヘリコプター市場に向けており、高速かつ効率的な巡航ステージで競合他社を置き去りにしたいと考えている。 「今日の多くのユースケースでヘリコプターを使用するのは、その垂直離着陸能力のためであり、素晴らしく効率的なクルーズフライヤーだからではありません」と最高商務責任者のサーシャ・ハーデッガー氏は10月31日にFlightGlobalに語った。ティルトウィング「Aero3」は、スムーズな巡航とタッチアンドゴー機能が不可欠な航空救急車の任務と重要」な医療貨物の配送に最適化されている。幹部らによると、この航空機は重要な予備部品を出荷する業界や潜在的な監視用途からも関心を集めているという。 同社の設計責任者であるサイモン・ベンドリー氏は、この航空機のティルトウィング構成が、ティルトローターの概念に基づいたエアタクシー設計の複雑な分野とは一線を画すものであると考えている。デュフール氏が提案した航空機は、翼に取り付けられた6個のプロペラと尾部に取り付けられた2個のプロペラを備えている。これは、1960年代に開発され、垂直離陸と短距離離着陸の両方が可能な実験航空機であるカナディアCL-84ダイナバートからインスピレーションを得ている。CL-84計画は商業的には軌道に乗らなかったが、カナダ軍と米国軍が実施した飛行試験では、この設計が有望であることが示唆されていた。ベンドリー氏によると、ティルト翼航空機はティルトローター型の航空機よりも同時に必要な揚力と推力が少ないため、この設計は効率的であるという。【Flightglobal news】
【Dufour Aerospace社提供:8人乗りハイブリッド電気Tilt Wing「Aero3」航空機】
2. 自律飛行システムの不可欠な部分としてレーダーを採用した信頼性の高いロボティクス社
米国カリフォルニアの新興企業リライアブル・ロボティクス社はレーダー技術を遠隔自律飛行システムの開発に不可欠とみなして、業界の専門家マーク・ポス氏をレーダー設計の指揮者に選んだ。 「レーダーはカメラやライダーとは異なり、全天候センサーです」とポス氏は11月1日にFlightGlobalに語った。「これは、霧や雨雪など、どんな状況でも機能する唯一のセンサーです。」とも語った。ポス氏は約 30 年間設計エンジニアを務めており、ボーイング 737 やエアバス A320 の自動着陸に使用されるレーダー高度計の開発に貢献してきた。リライアブルのチームへの彼の追加は10月27日に発表された。 自律飛行分野の競合他社は、ソナーやレーザー測距など、他の種類のセンサーを利用しているが、リライアブル・ロボティクス社は、レーダーが認証される可能性が最も高いと見ている。リライアブルの回避検出システムには、航空機衝突回避システム (TCAS) や自動従属監視システム (ADS-B) など、他の航空機と通信する既存の機上システムからの情報を使用するアルゴリズムが含まれている。カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置く リライアブル・ロボティクス社は、タクシー、離陸、着陸を通じて常時オンの自動操縦の認証と実用化を目指している。本年7月、FAAはリライアブル社の飛行システム認証計画を受け入れたが、そのプロセスには合計18~24か月かかると予想されている。【Flightglobal News】
【Reliable Robotics社提供:自律飛行システム認証に使用されているセスナ・グランドキャラバン機】
日本のニュース
1. JAL、CA志望者向けオープンカンパニー 11月から開催
日本航空は10月30日、客室乗務員志望者を主な対象とした「客室乗務職オープンカンパニー」を開催すると発表した。11月下旬にオンライン開催後、2024年2月には参加者を対象に対面形式のイベントも予定している。対象は専門学校、短大、高専、4年制大学、大学院に在籍している人。内容は客室乗務員が担う保安要員・サービス要員としての業務の紹介に加え、乗務で培った知見や感性を活かした間接部門での仕事なども取り上げる。参加者の質問に応える客室乗務員との座談会も開く。オンラインイベントは、1回1時間30分程度で11月下旬から順次実施。応募はJALのインターンシップサイトから「マイページ」のアカウントを作成し、Webエントリーシートを30日から12月15日までの間に提出する。選考通過者には11月下旬以降の日程を案内する。また、オープンカンパニーの参加者を対象に、客室乗務職について理解を深めてもらう対面形式のイベントを2月に開催予定。詳細はインターンシップページに後日掲載するという。【Aviation wire news】
2. エア・ドゥ、初のパイロット自社養成 2030年問題に対処
エア・ドゥは11月1日、パイロットの自社養成プログラムを始めると発表した。同社初のパイロット自社養成で、北海道と全日本空輸、三井住友銀行、東京海上日動火災保険、道内の各大学と協力して進める。航空業界ではパイロットが不足する「2030年問題」が懸念されており、自社養成によりパイロット数の維持・拡大を促進したい考え。訓練課程は海外で約2年、国内で約1年の計3年間。海外でEASA(欧州航空安全庁)ライセンスを取得後、国内での訓練に移り、国土交通省航空局(JCAB)ライセンスに切り替えて訓練を進めていく。訓練期間中はエア・ドゥの契約社員として在籍し、給与を支払う。訓練費用はエア・ドゥと候補生で分担し、候補生分はSMBCのサポートローンを利用できる。また、クラウドファンディングでの訓練費用の支援募集も予定する。エントリーには、ANAが実施するパイロット適性テスト「FCAT(Flight Crew Assessment Test)」を受検し合格する必要がある。エア・ドゥの採用選考時期は、現在のところ未定。エア・ドゥは今回の自社養成プログラムを、海外訓練を実施するノルウェーの言葉でサケの遡上(そじょう)を意味する「ラクスループ」プロジェクトと命名。特設サイトを開設し、訓練プロセスなどプロジェクトの概要を掲載するほか、在籍中のパイロットからのメッセージも紹介している。【Aviation wire news】
3.JAL/ANA共に、2023年度4月~9月の業績好調
日本航空が10月31日に発表した2023年4-9月期(24年3月期第2四半期)連結決算(IFRS)は、純利益が616億7100万円(前年同期は21億5800万円の純損失)だった。売上高にあたる「売上収益」、本業のもうけを示す「EBIT(財務・法人所得税前利益)」、純利益がすべてコロナ前2019年度を上回り、年間配当予想額を従来の1株40円から同60円に増配し、通期予想を上方修正した。2024年3月期通期の連結業績予想は上方修正。売上収益は前期(23年3月期)比22.4%増の1兆6840億円(前回発表から260億円の上方修正)、EBITは2.0倍の1300億円(同300億円の上方修正)、純利益は2.3倍の800億円(同250億円の上方修正)を見込む。また、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスが10月31日に発表した2023年4-9月期(24年3月期第2四半期)連結決算(日本基準)は、純利益が前年同期比4.8倍の932億600万円だった。営業利益は1297億円、営業利益率は12.9%で利益額、利益率ともに4-9月期として過去最高となり、5期ぶりに復配する。通期連結業績予想は据え置き、純利益800億円を見込む。今期(24年3月期)の通期連結業績予想は4月27日の発表から据え置いた。売上高は前期比15.4%増の1兆9700億円で、営業利益は16.6%増の1400億円、経常利益は2.9%増の1150億円、純利益は10.6%減の800億円を見込む。【Aviation wire news】
4. PWエンジン問題で高圧系ディスク交換 ANA機14%、国内他社影響なし
全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスは10月31日、国内線と国際線で運航するエアバスA320neoファミリー全33機が搭載する米プラット&ホイットニー(PW)製エンジン「PW1100G-JM」の点検作業の影響で、2024年1月から3月までに国内線・国際線合わせて22路線2412便、1日あたり約30便を減便すると発表した。ANAHDでは、今年7月にメーカー側から最初の連絡があった時点で、対象部品の交換時期が近いエンジン5台は運航から外しており、1月の点検開始まで安全上の問題はないことをメーカーに確認しているという。対象機材の内訳は、国際線と国内線に投入しているA320neo(2クラス146席:ビジネス8席、エコノミー138席)が11機、国内線機材のA321neo(2クラス194席:プレミアムクラス8席、普通席186席)が22機の計33機。ANAHDが保有するA320neoファミリー全機が対象で、A320neoは同系列の標準型、A321neoは胴体が長い長胴型となる。2機種とも、1機あたりエンジンを左右の主翼下に1台ずつ搭載する「双発機」となる。ANAHDの保有機材は現在240機で、33機は13.8%にあたる。PWの親会社RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)は今年7月に、PW1100Gで使われている特定の部品について、「粉末冶金(やきん)」による製造時の不具合が発生している可能性があるとして、エンジンを機体から取り下ろす点検が必要だと発表。RTXやANAHDによると、2015年10月から2021年9月までに製造された部品が対象になる。PWによると、エンジン1台あたりの作業期間は250日から300日となる見通し。ANAHDでは、使用期限が近い50台のエンジンが1月から順次作業に入り、部品交換を終えた第1陣は来年10月ごろに復帰するとみられる。【Aviation wire news】
【Aviation Wire提供:PW1100G-JMエンジンでDiskの交換が必要となる高圧圧縮機/高圧タービンセクション】
5. 「気球での宇宙遊覧」の来夏実現を目指す岩谷技研
10月28日から11月5日まで東京ビッグサイトでは、「Japan Mobility Show 2023」が開催されている。かつての「東京モーターショー」からリニューアルし、その裾野を“モビリティ”へと広げた同展示会にて、岩谷技研は、2024年の商業利用開始を目指して開発を進める「宇宙遊覧フライト」用の気球・気密キャビンの模型を展示している。北海道に拠点を置く岩谷技研は、高高度ガス気球を用いた宇宙遊覧の実現を目指す宇宙開発企業で、気球および乗員が乗り込む気密キャビンの設計・開発・製造を行っている。同社が構想する気球での宇宙遊覧は、成層圏にあたる高度約2万5000mまでおよそ2時間をかけて上昇し、約60分間の遊覧ののちに海上へと着水するもの。厳密には高度10万m以上の領域とされる“宇宙”の範囲までは届かないものの、岩谷技研の担当者によると「宇宙に行ってやりたいことについてアンケートなどを行うと、“地球を見渡したい”という意見が最も多く見られる」といい、その目的を満たすことができるのに加えて、安全性やサービスの実現性などを併せて考慮した場合の最適な目標として、高度約2万5000mでの遊覧を目指しているという。この有人宇宙遊覧プロジェクトは、2020年7月の始動以来、数々の打ち上げ・飛行試験で着実に成果を重ねており、2023年10月には気密キャビンに人を乗せた自由飛行試験で、成層圏の入り口とされる高度1万mへの到達に成功している。【マイナビニュース】
【Yahooニュース提供:岩谷技研が展示している「宇宙遊覧フライト」用の気密キャビン(模型)】