KIT航空宇宙ニュース2022WK34

KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2022WK34

海外のニュース

1.GEとNASA、電気飛行機エンジン高高度条件で試験 民間機転用可のハイブリッド技術

GEとNASA(米国航空宇宙局)の2者はこのほど、電気飛行機に搭載するハイブリッドエンジンについて、高高度条件下での高出力(メガワット、MW)と高電圧(マルチキロボルト、kV)試験に成功した。民間機への転用が可能な技術で、二酸化炭素(CO2)の排出量削減につながる。試験は米オハイオ州サンダスキーにあるNASA電気航空機テストベッド「NEAT」(NASA’s Electric Aircraft Testbed)で進め、高出力・高電圧に対応したハイブリッド電気推進システムを、高度4万5000フィート(約1万3700メートル)までを再現した条件下で動作させた。2021年6月に開始し今年初頭に終了。GEは電気モーターや発電機、コンバーター、トランスミッション、電力制御システムなどを開発した。GEは今後、GE製CT7エンジンを搭載したターボプロップ機「サーブ340B」を使用し、ハイブリッド飛行試験を実施する見通し。飛行試験にはボーイング傘下の米オーロラ・フライト・サイエンス(Aurora Flight Sciences)も協力する。電気モーターは高度1万フィート(約3050メートル)以上の高度で、低高度と異なる挙動を示す。普段は気体中には電気を通さないが、電極の間にプラズマが生じることで電気が流れる「放電」が起きる「プラズマアーク放電」の影響を受けやすくなる。【Aviation Wire News】

【Yahooニュース提供:GEとNASAが実証試験中の電動ハイブリッドエンジンモデル】

2.Eveは来月シカゴで eVTOL サービスのシミュレーションを実施する

エアタクシーの開発者である Eve は、Blade Air Mobility とのパートナーシップを通じて、来月シカゴでヘリコプターを使用して「アーバン エア モビリティ」(UAM)のコンセプトをテストする予定。ヘリコプターは電動垂直離着陸機 (eVTOL) の「代替品」として機能し、Eve がオンデマンドの短距離都市間空の旅の概念をよりよく研究するのに役立つ、と Eve は 8 月 23 日に述べている。フロリダ州メルボルンに拠点を置く Eve は、2026 年までにエアタクシーを旅客サービスに導入することを目標に、4 人乗りの eVTOL を開発している。【Flightglobal News】

【エンブラエル社提供:Eveの概念的なエアタクシーの想像図】

3.ハーバー・エアが完全電気飛行機で初のポイント・ツー・ポイント試験飛行を成功裏に完了

水上飛行機の航空会社であるHarbour Airは、カナダでの最初のポイント・ツー・ポイント テスト飛行を成功裏に完了することにより、全航空機の電気化に向けて前進した。eBeaver 電気飛行機は、着陸時に十分な予備電力を残して 45 マイル飛行した。ハーバー エアは、1982年にカナダのブリティッシュ コロンビア州の林業向けサービスとして2機の小型水上飛行機で運航を開始し、現在は北米最大の水上飛行機航空会社です。現在保有している航空機は40機以上で、カナダと米国の西海岸での遊覧飛行やプライベート・チャーターを含め、1日あたり最大300の定期便を運航している。Harbour Airの電化への道は、2019年に電気推進システムメーカーのmagniXと提携してeBeaverを開発したときに始った。eBeaverは、6人乗りのDHC-2 de Havilland Beaver飛行機を750馬力(560 kW)に拡大したmagni500推進システム電化バージョンで、その初飛行は成功を収めた。【Flightglobal News】

【Harbour Air提供:試験飛行するHarbour Airの全電動デハビラントBeaver機】

日本のニュース

1.入国時の陰性証明、ワクチン3回目接種で免除 9/7からYahoo

厚生労働省は8月25日、日本へ入国時に必要としCOVID-19)の陰性証明書について、9月7日午前0時から3回目のワクチン接種を済ませていることを条件に免除すると発表した。現在は水際対策の一環として、日本人を含むすべての入国者に、日本へ向けて出国前72時間以内の陰性証明書の提出を求めている。また、1日2万人としている入国者数の制限は、段階的な緩和を目指す方針。しかし、観光目的の入国は添乗員付きのパッケージツアー限定で個人旅行を認めておらず、従来は観光で訪れる場合はビザを免除していた国にもビザ取得を求めている。訪日需要が回復に向かうまでには、陰性証明書の運用見直しや入国者数の制限緩和以外にハードルがいくつもあり、感染対策とのバランスが求められている。政府による水際対策の緩和が“小出し”であることから、航空各社からは早期にG7(先進7カ国)並みへの緩和を求める声が強まっている。【Aviation Wire News】

2.安倍氏国葬で飛行制限区域 武道館周辺46キロ

政府が9月27日に開く安倍晋三元首相の国葬に伴い、国土交通省航空局(JCAB)は8月25日、会場となる東京・千代田区の日本武道館周辺に飛行制限区域を設定したと発表した。テロ防止対策の一環で、警察や消防、定期便、報道などの航空機は対象外となる。期間は9月26日午前0時から28日午後11時59分まで。日本武道館を中心とする半径25海里(約46キロ)の円内を飛行制限区域とした。すべての高度が対象となる。自衛隊や海上保安庁、警察など警備や警戒にあたる航空機や、災害などの捜索や救助にあたる消防・防災ヘリ、管制機関から飛行を認められた定期便などの航空機、航空法に基づく許可を得た報道ヘリなどは飛行制限の対象外になる。政府は海外から数百人規模の出席者を招き、参列者は最大で6000人規模になる見込みで、来日する要人は入国者制限の枠外とする方針。一方、報道各社の世論調査では、国葬に対して否定的な意見も多く見られ、まもなく1カ月を切る中で二分している。【Aviation Wire News】

3.九州の航空3社、国内初ANA/JAL超えコードシェア ANAが天草・JAC、JALがORCと

九州の地域航空会社3社と全日本空輸、日本航空の5社が出資する地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)は8月23日、国内初となる大手2社の系列を超えたコードシェア(共同運航)を、冬ダイヤ初日の10月30日から始めると発表した。航空券は8月30日から販売する。EAS LLPを構成する九州の地域航空会社は、天草エアライン、オリエンタルエアブリッジ、日本エアコミューターの3社。今回の取り組みでは、ANAが天草エアとJAC運航便の座席を、JALがORC便をそれぞれ販売可能になる。九州3社は、既存のコードシェアなどの提携に加え、今回の取り組みで利用拡大につなげる。コードシェアの対象路線は、ANAと天草エアが天草-熊本、福岡の2路線8便。ANAとJACは鹿児島発着が種子島、屋久島、奄美大島、徳之島、喜界島、与論、沖永良部の7路線、奄美大島発着が喜界島、徳之島、与論の3路線、那覇発着が沖永良部、奄美大島の2路線、福岡-屋久島線、徳之島-沖永良部線で計14路線44便、JALとORCは長崎発着が壱岐、五島福江、対馬の3路線、福岡発着が対馬、五島福江の2路線で計5路線22便となる。EAS LLPは2019年10月25日設立。天草エアとORC、JACの九州3社と大手2社の5社が出資し、経営環境が厳しい地域航空会社が存続できるよう、ANAとJALの系列の垣根を越えた取り組みを進めている。【Aviation Wire News】

【Aviation Wire提供:JAL、ORC、AMX、JAC、ANA各社のCA】

4.名大、エンジンも燃料もなしで軌道制御を行える超小型衛星を開発

名古屋大学(名大)は8月23日、革新的衛星技術実証3号機の実証テーマの1つとして、2022年10月7日に内之浦宇宙空間観測所から宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケット6号機によって打ち上げられる予定の4.4kgの超小型衛星(キューブサット「MAGNARO(MAGnetically separating NAno-satellite with Rotation for Orbit control)」を公開した。また、同衛星は2機に分離すること、エンジンや燃料を一切用いず、地球磁場やわずかに存在する空気効力などを用いて姿勢制御や編隊形成を行うということも併せて発表された。開発は、名大大学院 工学研究科の稲守孝哉准教授らの研究チームによるもの。また今回の研究は、2020年度から始まった科学技術振興機構の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同(育成型)「超小型衛星における回転分離を用いた編隊形成と宇宙実証機の研究開発」の支援のもとで行われた。従来の考え方では、宇宙環境による外乱の影響を受けやすい小型衛星において、エンジンなどの軌道制御機器が必須とされてきた。しかし、小型衛星は複数機の開発や打ち上げが比較的容易という大きなメリットがあるが、電力、質量、スペースの制約が厳しく、すべての小型衛星でエンジンを搭載できるわけではない。そうした中で、稲守准教授らは宇宙環境からの外乱を抑圧するのではなく、その外乱の特性に着目することにしたという。その理解を深めることで、むしろ宇宙環境を利用して衛星の編隊を形成し維持する、という新しい発想をもって研究を進めてきたとする。そして今回、革新的衛星技術実証3号機のうちの1機として、これまでの研究成果を軌道上で技術実証するため、MAGNAROが開発された。MAGNAROは「MAGNARO-Tigris」と「MAGNARO-Pisics」からなり、打ち上げ時には磁気の力により両衛星は接続されている。衛星には「磁気トルカ」(電磁コイル)が搭載されており、地球磁場と作用させて発生したトルクによってスピンさせ、安定させる仕組みだ。そして衛星の機上で自律的に姿勢と軌道の決定を行い、適切なタイミングで分離させ、編隊が形成されるという。【マイナビニュース】

【名古屋大学提供:MAGNARO、左がMAGNARO-Tigrisで、右がMAGNARO-Pisics】