KIT航空宇宙ニュース2024WK41

国内最大の航空宇宙産業の総合展示会「2024 国際航空宇宙展」が2024 年10 月16 日(水)~19 日(土)の 4 日間、東京ビッグサイト西展示棟全館で開催される。
KIT航空宇宙ニュース

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海外のニュース

1. JAL出資の米ブーム、実証機が飛行試験5回目成功 超音速に年内到達へ

超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」を開発中の米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)は現地時間10月7日、年末までに超音速飛行を目指す技術実証機「XB-1」(登録記号N990XB)の5回目となる飛行試験に成功した。超音速に達するまでに10回の亜音速飛行を予定しており、折り返し地点に到達した。5回目の飛行試験は、これまでと同じカリフォルニア州のモハベ(モハーヴェ)空港・宇宙港で行われ、チーフテストパイロットのトリスタン“ジェペット”ブランデンブルグ氏が操縦桿を握った。今回初めて着陸装置を離陸直後に格納し、実際のフライトの状態に近づいた。今後の飛行試験では標準的な手順になる。最高速度はマッハ0.69(約845キロ)、高度は1万7800フィート(約5425メートル)に達し、総飛行時間は約50分で、これまでの最速、最高高度、最長飛行を記録。操縦性などを確認した。前回使用したFES(フラッター励振システム)が修理され、再設置された。FESは現段階の飛行試験で重要なシステムで、超音速までの飛行限界を明らかにするために広範囲に使用される予定だという。実証機のXB-1は2人乗りで、主翼の形状はデルタ翼を採用し、エンジンは既存のGE製J85-15が3基。アフターバーナーを使ってマッハ2.2(時速換算2335キロ)の実現を目指す。ブームは、XB-1で超音速飛行の技術を検証し、同社初の超音速旅客機であるオーバーチュアの開発につなげる。オーバーチュアはエンジンが4基となり、アフターバーナーを使わずに現在の民間航空機の2倍となる速度を実現し、マイアミからロンドンまで5時間弱、ロサンゼルスからホノルルまで3時間で結ぶ。ブームには日本航空(JAL/JL、9201)も出資しており、実際に量産するオーバーチュアは、ユナイテッド航空(UAL/UA)などが発注している。【Aviation wire news】

【Yahooニュース提供:5回目の試験飛行に成功したBoom社の超音速実証機「XB-1」】

2. 業界団体が未承認エンジン部品の問題に対処するための自己監視計画を発表

GEエアロスペースが率いる研究グループは、未承認のエンジン部品がサプライチェーンに流入するのを防ぐことを目的とした勧告を発表した。10月9日に発表された自主的な措置の勧告は、近年英国のサプライヤーAOGテクニクスが未承認部品を販売していた事件(注目を集めた調査を引き起こした)を受けて出されたものである。GEアビエーションとサフラン・エアクラフト・エンジンズが共同所有するCFMインターナショナル製のエンジンは特に大きな影響を受けており、数十機のCFM56にAOGテクニクスが供給した部品が含まれていたが、その部品には偽造文書が含まれていた可能性があると報告されている。GEは2月に、未承認部品の問題に取り組むことを目標に航空サプライチェーン整合性連合を結成した。連合の他のメンバーは、エアバス、アメリカン航空、ボーイング、デルタ航空、サフラン、整備会社スタンダードエアロ、ユナイテッド航空である。報告書は、航空会社と整備工場に対し、FAAの自主プログラムまたはEASA基準に基づいて認定されたサプライヤーからのみエンジン部品を調達するよう求めている。また、業界に対し、サプライヤーを監視するための新しい組織を設立し、認定ベンダーのデータベースを構築するよう求めている。【Flightglobal news】

【Flightglobal提供:AOGテクニクス社製の未承認部品が含まれていたCFM56エンジン】

3. テキストロン・イーアビエーションのネクサスeVTOL機は2025年に飛行を計画

テキストロン・イーアビエーション社がハイブリッド電気式Nuuva V300貨物ドローンの飛行試験を開始する準備を進める中、Nexus eVTOL航空機がウィチタ本社に集結している。世界初の全電気式練習機「Velis Electro」の認証を取得したTextron Inc. の事業部門は、航空機の開発と製造における同社の数十年にわたる経験を基に、電気航空業界での足場を固めるべく取り組んでいる。テキストロン社は2022年にeAviation事業部を立ち上げた。同年、同社はヴェリス・エレクトロを開発した欧州の航空機メーカー、ピピストレル社を買収した。その後まもなく、eAviation事業部はテキストロンの子会社ベルからNexusプログラムを引き継いだ。ベルは2019年からeVTOLエアタクシーの計画に取り組んでいた。ベルの下でのNexusプログラムの出だしは不安定だったが、テキストロンの子会社eAviationは順調に軌道に乗り、2025年に飛行試験を開始することを目指している。Nexus は、3人または4人の乗客を乗せられる全電動の有人eVTOL航空機です。1回の充電で約100海里を飛行し、巡航速度は120ノットです。Textron eAviationは、Nexusが都市の空中移動、救急医療サービス、人道支援、法執行、特殊任務など、さまざまな用途に活用されると考えている。【Aerospace International News】

【Textron eAviation社提供:Textron eAviationが開発中の全電動eVTOL機「Nexus」】

4. エアバスとフィリピンが持続可能な航空燃料の実現可能性調査で提携

フィリピン政府とエアバスは、国内で持続可能な航空燃料(SAF)を生産する可能性を探るために提携を結んだ。マニラで開催される2024年航空サミットで発表された共同実現可能性調査は、現在の国際民間航空機関(ICAO)ACT-SAFテンプレートに基づいて実施される。 この調査には、フィリピン特有のマクロ経済データの分析、SAF原料と生産経路の評価、関連する実施支援、資金調達、政策の評価、および行動計画の草案作成が含まれる。調査の一環として、フィリピンはエネルギー省主導の国家バイオ燃料委員会の下にSAF委員会を設立し、同国のSAFロードマップの策定を監督している。フィリピンはICAO加盟国として、2050年までに航空業界の炭素排出量実質ゼロの目標を達成することに取り組んでいる。2024年のシンガポール航空ショーで、エアバスのアジア太平洋地域社長アナンド・スタンレー氏は、アジア太平洋地域の航空会社は2030年までに5~10%のSAFを使用することを約束していると語った。アナンド氏はまた、この地域の各国にはSAFに変換できる独自の豊富な資源があり、フィリピンの膨大な食用油生産を例に挙げた。フィリピン運輸省航空空港担当次官ロベルト・リム氏は、この調査は国内で経済的に実行可能なSAF生産を推進するための関連政策、規制、プログラムの開発に役立つだろうと述べた。【Aero Time】

【フィリピン政府提供】

5.ボーイング、従業員1.7万人削減 777Xは26年に納入延期、767Fは27年生産完了

ボーイングのケリー・オルトバーグ社長兼CEO(最高経営責任者)は現地時間10月11日(日本時間12日)、全従業員にメッセージを送った。ストライキの長期化に伴い、従業員の削減など構造改革が不可欠であることをはじめ、開発中の次世代大型機777Xの納入開始が2026年に遅れること、767F貨物機の民間向け新造を2027年に終えることなどを伝えた。人員削減は全従業員の約10%にあたり、約1万7000人規模になる見通し。777Xは、開発上の課題に加えて、不具合発覚で飛行試験が一時中断したことや、現在も作業停止が続いているため、2025年度の納入開始を断念。引き渡し開始が2026年になる見込みであることを航空会社など顧客へ伝えたことを従業員にも共有した。767F貨物機は、受注済みの機体の製造と引き渡しを進め、2027年に民間向けの製造を終了。米空軍や航空自衛隊などが採用している、767を母機とする空中給油・輸送機KC-46Aの製造は継続する。9月にトップが退任に追い込まれた防衛・宇宙・セキュリティ(BDS)部門については、「必要な水準に業績が達していない」(オルトバーグ社長)と指摘。プログラムの課題や767F貨物機の生産完了決定などにより、今四半期はBDSで新たな損失が大幅に発生すると予想した。オルトバーグ社長は「この事業とプログラムに対し、より一層の監督を行う予定だ」と述べた。BDSでは、KC-46Aの欠陥や、今年6月に打ち上げられた宇宙船「CST-100 スターライナー」が有人で帰還できなくなるなど、さまざまな問題が起きており、収益に悪影響を及ぼしている。人員削減については、全従業員の約10%にあたる人数を今後数カ月間で削減予定。「削減には経営陣、管理職、従業員が含まれる」と、経営陣も対象であることを明らかにし、来週従業員に詳細を共有するとしている。【Aviation wire news】

日本のニュース

1. ZIPAIR、CA募集 25年度入社で新既卒150人

日本航空傘下の中長距離LCC、ZIPAIR(ジップエア)は10月10日、客室乗務員(CA)として乗務もする正社員「Z_ONE」の募集を始めた。客室業務のほか、空港のグランドスタッフ(地上旅客係員)や、サービス企画などの業務にも従事する。2025年度入社で、採用人数は新卒・既卒合わせて150人程度を予定している。ZIPAIRのCAは、客室業務・空港旅客業務・サービス企画業務など複数の領域を兼務する。入社後は、乗務経験の有無や経験年数に応じ、客室業務や旅客業務から仕事に就く。国内の航空会社では、管理職への昇進が入社後15-20年程かかるのが一般的だが、ZIPAIRは入社から最短4年で管理職に登用する人事制度を導入しており、役職に応じて給与も上がる。応募資格は、既卒が2025年3月末時点で専門・高専・短大・4年制大学・大学院を卒業・修了している人で、新卒は今年4月から2025年3月までに専門・高専・短大・4年制大学・大学院を卒業・修了見込みの人。入社時期は、いずれも同年4月以降の会社が指定する時期となる。英語力は、TOEIC600点以上が望ましいとしている。また、既卒はCAとしての経験は問わない。応募は同社のウェブサイトからで、エントリー期間は10月10日午後5時から30日午後5時まで。選考は書類・Web適性検査・面接・健康診断などを予定しており、1次選考が11月、最終選考は12月を予定している。ZIPAIRの機材はボーイング787-8型機(2クラス290席)が現在8機で、2025年度に10機体制となる見込み。成田空港を起点にバンコク(スワンナプーム)、ソウル(仁川)、ホノルル、シンガポール、ロサンゼルス、サンノゼ、サンフランシスコ、マニラ、バンクーバーの国際線9路線を運航しており、ヒューストン線を2025年3月4日に開設する。【Aviation wire news】

2. JALとジェイエア、自社養成パイロットのインターンシップ 1月開催

日本航空(JAL/JL、9201)とジェイエア(JAR/XM)は10月7日、自社養成パイロットの業務体験(旧インターンシップ)を2025年1月に合同開催すると発表した。対面とオンラインいずれかを選択できる。パイロットの具体的な業務内容や1日の仕事の流れを紹介するほか、パイロットの安全への思いや仲間と協力して安全なフライトを達成すること、エアマンシップの本質などを体験を通じて理解してもらう。対象は4年制大学または大学院、高専専攻科の在籍者が対象で、学年・専攻・学部不問。実施日は1月14日から18日のうち、いずれか1日となり、選考を実施する。エントリー期間は11月1日から12月1日までで、このほかにジェイエア単独の業務体験も別途開催する。JALによると、これまでは「インターンシップ」と呼んでいたが、2023年度から国の定義で1日開催のものはインターンシップに該当しないため、「業務体験」に変更したという。【Aviation wire news】

3. ANAグループ、パイロット適性検査FCAT受付開始 24年秋

全日本空輸を中核とするANAグループのパイロット適性テスト「FCAT(Flight Crew Assessment Test)」の2024年秋開催分のエントリー受付が10月から始まった。ANA本体のほか、ピーチ・アビエーションやANAウイングスなどグループ各社もパイロットの選考に用いている。FCATの応募要件は、各眼の矯正視力が0.7以上であること、各眼0.7、両眼1.0以上の視力に矯正できるレンズの屈折度が±8ジオプトリーを超えないことが条件となる。選考終了時期により、グループを1から3まで設定し、エントリーの受付締切日が異なる。FCAT選考が2025年1月下旬に終了予定の「グループ1」は、受付締切日が10月30日で、2月下旬選考の「グループ2」は締切が12月3日、3月下旬選考の「グループ3」は12月20日締切となる。選考は5次まであり、1次が書類選考、2次が英語試験、3次が適性検査、4次がグループワーク・面接、5次が身体検査・能力検査。日程はグループごとに異なり、グループ1は1次選考が11月上旬で5次が1月上旬から下旬、グループ2は1次が12月上旬で5次が2月中旬から下旬、グループ3は1次が12月下旬で5次が3月上旬から下旬となる見込み。FCATはANAグループがパイロット採用で取り入れている適性テスト。ピーチ・アビエーションの2019年度入社から、ANAウイングスの2020年度入社から選考で用いられ、ANA本体は2023年度から導入。2023年11月にパイロットの自社養成を始めると発表したエア・ドゥも導入した。エア・ドゥにはANAホールディングスが出資している。【Aviation wire news】

4. 2024 国際航空宇宙展 <東京ビッグサイト>

国内最大の航空宇宙産業の総合展示会「2024 国際航空宇宙展」が2024 年10 月16 日(水)~19 日(土)の 4 日間、東京ビッグサイト西展示棟全館で開催します。19日(土)はトレード・パブリックデーとなり、数多くのパブリックイベントを行います。航空自衛隊による音楽隊コンサート・月基地VR体験などなど、イベントが盛り沢山。(16日(水)~18日(金)はトレードデーとなりビジネス展示会となります。)【お台場Net】

【東京ビッグサイト提供】