KIT航空宇宙ニュース2023WK22

NASAは有人月探査計画「アルテミス」で使用する月着陸船を開発する企業として、米宇宙企業「ブルー・オリジン」を選定。ブルー・オリジンが開発する月着陸船「ブルー・ムーン」の想像図
KIT航空宇宙ニュース

KIT航空宇宙ニュース2023WK22

海外のニュース

1. 中国の国産小型機C919、初の商業運航

中国のCOMAC(中国商用飛機有限責任公司)が開発・製造する小型機C919型機の初号機が現地時間5月28日、商業運航を開始した。最初の顧客である中国東方航空が運航する上海(虹橋)発北京(首都)行きMU9191便が初便となった。C919は、ボーイング737型機やエアバスA320型機の機体サイズに相当する単通路機で、メーカー標準座席数は2クラス158席で最大1クラス192席、航続距離は標準型が4075キロ、航続距離延長型では5555キロ。2015年11月2日にロールアウトし、2017年5月5日に初飛行した。安全性を当局が証明する型式証明は、CAACから今年9月29日に取得したが、FAA(米国連邦航空局)などからは未取得のため、中国国内の運航にとどまる。中国東方航空には2022年12月9日に初納入した。エンジンは、CFMインターナショナル製新型エンジン「LEAP-1C」を搭載。LEAPシリーズは単通路旅客機向け次世代エンジンで、C919向けのLEAP-1Cのほか、エアバスA320neoファミリーで選択できるLEAP-1Aと、ボーイング737 MAXに独占供給するLEAP-1Bの3モデルがある。【Aviation wire news】

【Aviation Wire提供:商業飛行を開始した中国国産C919型機】

2.ジェフ・ベゾスの「ブルー・オリジン」、アルテミス計画の月着陸船を開発へ

米国航空宇宙局(NASA)は2023年5月19日、有人月探査計画「アルテミス」で使用する月着陸船を開発する企業として、米宇宙企業「ブルー・オリジン」を選定したと発表した。月着陸船の開発をめぐっては、すでにスペースXが選ばれており、ブルー・オリジンは2社目となる。スペースXの月着陸船は2025年と2028年に予定されている「アルテミスIII」、「IV」で使い、ブルー・オリジンの月着陸船は2029年の「アルテミスV」で使うという。2種類の月着陸船が運用されることで、アルテミス計画の堅牢性が高くなることが期待できる。【マイナビニュース】

【ブルーオリジン提供:ブルー・オリジンが開発する月着陸船「ブルー・ムーン」の想像図】

3.電動エアタクシー機開発会社Wiskがボーイングの完全子会社となる

カリフォルニアに本拠を置く電動エアタクシー機開発会社Wisk・Aeroは、今回ボーイングの完全子会社となったが、以前はこの新興企業の株主2社のうちの1社だった。 Wiskのブライアン・ユットコ最高経営責任者(CEO)は5月31日、昨年操業を停止した先駆的な電動航空機メーカー、キティホークが非公開金額でWiskの株式をボーイングに売却し、ボーイングが唯一の所有者となったと発表した。【Flightglobal News】

【Wisk/Aero提供:Wisk の第5世代と第6世代の全電気エアタクシー機のテスト機】

4.エアバスが将来の飛行機の客室のビジョンを発表

欧州の航空機メーカー、エアバスは、将来の客室設計の基礎となる「Airspace Cabin Vision 2035+」コンセプトを発表した。このコンセプトは持続可能性、軽量素材、デジタル化に重点を置いており、来週ハンブルグで開催されるインテリア・エクスポで、さらに詳細が明らかにされる予定。

【Airbus提供:「Airspace Cabin Vision 2035+」コンセプト】

5.先進的な素材が航空機リサイクルの新たな挑戦

10年経過したボーイング787-8型機2機(商業運航から退役する最初の型機)が最近、部品を取り外された裸の胴体一対になった。 分解作業を行ったアイルランドの航空機管理・貿易会社エアトレード・アビエーションによると、ジェット機からの使用済みの実用可能な材料は、世界的な航空機部品不足の中ですでに「大きな関心」を集めているという。これらは史上初の分解された 787 機であるため、これまでボーイング社の主力ワイドボディ機の運航者が利用できる中古部品はほぼゼロだった。787 の翼と胴体のカーボン複合材料をどうするかは、あまり明らかではない。航空業界にとって新たな問題として、787やエアバスA350 などの次世代ワイドボディ機の製造に使用される先進材料のリサイクルと再利用のベストプラクティスはまだ確立されていないと、航空業界の暫定エグゼクティブディレクターであるサム・オコナー氏は述べている。 Aircraft Fleet Recycling Association (AFRA) は、航空機の解体作業の指導と監督を行う業界団体です。航空機、自動車、産業からの複合材料は、多くの場合、焼却されるか埋め立て地に埋められるが、主要な機体コンポーネントを廃棄するための長期的な解決策としては現実的ではない。(ボーイング社によると、ドリームライナーファミリーの中で最小の787-8型機は、機首から尾翼までが57メートル(186フィート)、翼幅は60メートルだという。)そして、そのような材料はリサイクルが難しい。次世代ジェット機の耐用年数終了問題をより深く理解する取り組みの一環として、AFRAは、カーボン複合材の胴体と翼端、および一部のエンジン部品を含む、最近退役したドリームライナーの残存物を譲り受けた。とコナーは言います。胴体は小さな部分に切断され、ウェールズの航空機解体会社であるECubeに送られ、同会社は材料を1年間保管することに同意した。787 の優雅に湾曲した翼は、ジェット機が解体される近くのスコットランド国立製造研究所に送られ、ドリームライナーから除去された炭素繊維素材の一部はボーイング社に返却され、回収された素材は研究開発目的で使用される予定だ。今後数十年でより多くの次世代ジェット機が製造され退役するにつれ、耐用年数が終了したハイテク航空機部品の取り扱いに関するベストプラクティスを確立することが重要になるだろうとオコナー氏は言う。【Flightglobal News】

【エアトレード・アビエーション提供:解体されたボーイング787型機】

日本のニュース

1.スターフライヤー、中途CA採用30人 9月・12月入社

スターフライヤーは、客室乗務員職(CA)の中途採用を始めた。9月1日か12月1日入社で、30人程度を採用する。応募資格は専門学校・高専・短大・4年制大学・大学院を卒業・修了している人。入社時期は9月1日か12月1日を予定し、指定時期に入社可能な場合は、2024年3月までに卒業・修了見込みの人も応募できる。航空機乗務に際し、呼吸器・循環器・耳鼻咽喉・眼球・腰椎などに支障がなく、必要な体力があり、心身ともに健康な人を求めている。また、英語力はTOEIC600点以上が望ましいとし、中国語、韓国語の能力があればなお良し、としている。詳細は同社の採用サイトで公表している。【Aviation wire news】

2.ANA、NFT事業に参入 幻の787特別塗装やルーク・オザワ氏写真

ANAホールディングス傘下のANA NEO(ANAネオ)と全日本空輸は5月30日、ブロックチェーン技術を活用した新事業として、複製が困難なデジタルデータ「NFT(非代替性トークン)」の事業を始めた。航空写真家ルーク・オザワ氏初のデジタル写真や、ボーイング787初号機(登録記号JA801A)の特別塗装機案として検討されていた幻のデザインなどを扱う。ANA NEOがNFT販売プラットフォームとして「ANA GranWhale NFT MarketPlace」をオープン。航空会社のグループとしては世界初だという。商品の第1弾として、ルーク・オザワ氏初のデジタル写真をNFTとし、うち1点はポジフィルム付きで販売。第2弾は787初号機の特別塗装機と幻のデザイン案の2つをNFTにし、3Dモデルの飛行機として6月7日から販売する。販売形態はNFTにより、オークションと定額を用意する。【Aviation wire news】

【ANA提供:「3D ANA787 Original JA801A」(左)と「3D ANA787 NFT Original JA801 α」】

3.空港施設の取締役、創業以来初の国交省OBゼロ 新役員体制6/29付

羽田空港の格納庫などの施設運営を手掛ける空港施設(8864)は5月29日、代表取締役を含む役員人事を内定したと発表した。6月29日開催予定の定時株主総会で正式決定し、就任する。1970年の設立以来初めて国土交通省出身の取締役がゼロになる。新任の取締役は、全日本空輸出身でANAホールディングス参与の三宅英夫氏、日本航空出身でジャルパック会長の西尾忠男氏、日本政策投資銀行(DBJ)出身で空港施設執行役員の久間敬介氏、空港施設の笹岡修氏が就任予定。常勤監査役に濱隆裕氏、社外監査役に上野佐和子氏が就任する見通し。【Aviation wire news】

4.3月国際線、4倍超125万人 国内線66.9%増931万人

国土交通省の航空輸送統計速報2023年3月分によると、国内線の旅客数は人ベースで前年同月比66.9%増(19年同月比0.5%減)の931万4558人、ロードファクター(座席利用率、L/F)は20.4ポイント上昇の78.6%、国際線は4.58倍(39.0%減)の125万4779人、L/Fは40.1ポイント上昇の81.0%だった。国内線の旅客数のうち、幹線でもっとも多かった羽田-福岡線の旅客数は、前年同月比59.4%増の75万3972人、ローカル線で最多の羽田-鹿児島線は、87.7%増の23万356人だった。L/Fは幹線が20.0ポイント上昇の83.9%、ローカル線は20.7ポイント上昇し74.1%だった。国際線の方面別旅客数は、7方面すべてで上回った。前年同月比で増加率が最も高かったのは韓国で、30.35倍の10万5405人。最も低かった米大陸は、3.17倍の27万6339人だった。旅客数が最も多かったのはその他アジアで4.52倍の58万5491人、2位は米大陸だった。【Aviation wire news】